2009.06.30(Tue)

これはねーわ;;(執筆時間と長さの意味で) 

えー、誰かさんが催促(違)してたお話が何とか完成いたしました。
6月中に間に合って良かったです(蹴


ただし。
月の国殴りこみ編(ぇ)までとはいかなくとも、もんの凄く長いです読む際は注意されたし。
という訳で、読む前にはジュースとポテチ(味不問。お徳用サイズだとなお良し)を準備しておく事をオススメいたします(ぇ

誤字とかもあるかも知れませんが、そこは生暖かい目で見てやってください((



                  新たな旅路



「もう1ヵ月になるか…」
ソファに座っているグランがぽつりと呟く。
「何が? …あ、それ」
フィーユが尋ねたが、グランが手に持っている物を見るとすぐに納得したようだった。
「もう…1ヵ月になるのね。…私達の、結婚式から」
「そうだな…あの時は進行をあの2人に任せたのが失敗だったと思ったよ、結構本気で」
「そう? 今考え直せば、いかにも2人らしい進め方だったと思うけど?」
「確かにそうだけど…何か腑に落ちない」
グランは頭を掻いた。



1ヶ月と、少し前―――



「ようやく決まったのかよ、フィーユとの結婚式。散々待たせやがって」
用件を伝えるなり、グロードは文句をつけてきた。
『ボクはお前の為に結婚式を挙げるなんて事は一度も考えてないぞ』
「こちとら、いつでもお前ら2人が式を挙げられるように準備してたんだぜ。数年前から」
それはいくらなんでも気が早すぎる。グランはそう返すが、
「いいか? オレは15の時からお前らの事を見てきてるんだぜ。17になった時にはもうフラグが立ちまくってたぞ」
『フラグを立てたつもりは一向にない』
グランはきっぱりと言い切った。
「ま、当日はオレとウェルに任しとけよ。バッチリ祝ってやるぜ」
『…なんか、これまでの2人の行いを考えると寒気がしてきた』
「へへっ。楽しみにしてろよな。そんじゃ、また」
グロードは電話を切ると、すぐに別の場所へ電話をかける。
『はい』
「よォ、フィーユ。決まったんだってな。おめでとさん」
『いきなり誰かと思ったけど、すぐに用件伝えてくるのはグロード君くらいね』
「え、オレすぐに用件伝えてるか?」
『それはもう』
フィーユはあっさりと肯定した。
『ところで、決まったって誰から聞いたの? やっぱり、グランから?』
「まぁな。さっきまで電話してたんだよ。『バッチリ祝ってやるから楽しみにしてろ』って言ってやったぜ」
『限度を忘れないでね』
「…信用ねぇなオイ」
『過去に散々ちょっかいを出したでしょう? 自業自得よ』
「やれやれ…ま、いいや。取りあえず、当日は楽しみにしとけよ。またな」
言いたい事だけ言ってさっさと撤収。これぞグロードクオリティ。


「相変わらず考えることが分からないよなぁ…グロードは」
「グロードさんがどうかしたの?」
グランが声のする方を向く。
「シルフィか…言葉通りの意味だよ」
「?」
「さっき、グロードにフィーユとの結婚式の日取りが決まったって電話したら、バッチリ祝ってやるってさ。今からいろんな意味で怖い」
グランの言葉に、シルフィの表情が少し変わった。
「そ、そう……決まったんだ……結婚式」
「ああ。1ヵ月と、ちょっと後にな」
「……」
シルフィは少し黙っていたが、
「よ…よかったね、お兄ちゃん。おめでとうっ」
笑顔で言った。しかし。
「…?」
グランは何か知らない違和感を覚えていた。


そのまま部屋に戻ったシルフィは、入るなりドアをバタンと閉め、鍵を掛けた。
床に座り込み、搾り出すように呟く。
「やだよ……いやだよ……おにいちゃん……」



結婚式、2週間前。

グランは受話器を耳に、相手が応答するのを待っていた。
『はい』
普段の口調でフィーユが応える。
「ボクだ。ちょっと話せるか?」
『…何か、あったの?』
不安そうな声で聞いた。
「どうしてそう思ったんだ?」
『分かるわ。グランがこんな感じの声だったら、大抵何かあったんだって。…それも、あまり良くない事が』
「なるほどな。これはフィーユに隠し事なんて出来ないって事か」
『ふふっ…そういう事ね。それで、どうしたの?』
「それが…少し前からシルフィの様子がおかしいんだよ」
『シルフィが…?』
「ああ。ボクが呼んでも上の空で、何度か呼んでようやく気付くって感じで」
『そう……』
フィーユは少し考えていたが、
『無理もないわ』
「どういう事だ?」
『分からないの? シルフィにとって、あなたはとても大切な存在なのよ。そんな人が結婚しちゃうんだから、寂しくなるのも当然だわ』
「…ボクとしては、これが少しでも兄離れのきっかけになればいいと思ってるんだけど」
『とにかく…そういう事だから、あまりシルフィを悲しませないであげてね』
「と、言われてもなぁ…」
『それじゃあね。ちゃんとシルフィの事も考えてあげなさいよ』
そう言うと、フィーユは電話を切った。
「考えろって言われてもなぁ…どうすればいいんだ…?」


結婚式、1週間前。

家には、シルフィしかいなかった。
自室の隅に座って、ただ俯いているだけ。
「なんだろう…お兄ちゃんが…だんだん遠くに行っちゃう気がする…」
ぽつりと呟いた直後、呼び鈴の音が小さく響く。
(そっか…今は私しかいないんだっけ…)
ゆっくりと立ち上がると、ドアを開け、階段を下りていく。
「はーい…」
玄関を開けると、シルフィは目を丸くして、
「お…お姉ちゃん!?」
シルフィの前に立っていたのは、姉のリナであった。
「しばらくぶりね。元気だった?」
「ど、どうしたの? 突然…」
シルフィは驚きを隠せない様子だったが、そんな事はお構いなしであった。
「どうしてって…グランが結婚するっていうから、お祝いに来たのよ?」
「あ……」
リナは、シルフィが寂しげな表情をしたのを見逃さなかった。
「なるほど…グランが言ってたのはこの事だったのね…」
「え…?」
「とにかく…中に入りましょう。話はそれから」


リナはソファに腰掛けると、辺りをぐるりと見回す。
「この家に戻ってきたのも、久しぶりね…」
「前に1回帰ってきてからは、結構長い間戻ってなかったから…」
ティーポットから紅茶を入れながらシルフィが答える。
「はい、お姉ちゃん」
「ありがと。シルフィが淹れた紅茶飲むのも、久しぶりよね」
「それで…」
シルフィが切り出すとリナは、
「シルフィは…グランには結婚してほしくないの?」
「そういうわけじゃないけど…」
困ったような表情でシルフィが答える。
「でも…」
「無理もないわ。昔からあなた、お兄ちゃん子だったもの。小さい頃から、グランの後に付いていってばっかり」
リナは笑って言った。
「ポケモン修行でシンオウの叔母さんの所に預けられる時だって、出発当日は大泣きしてたものね」
「そ、それは…;;」
「でもね。グランはきっと、あなたに祝福してもらいたいと思っているはずよ。あなたがそんな顔してたら、グランは安心出来るはずはないわ」
「だけど…」
「そういえばシルフィ、昔は『おおきくなったらおにいちゃんのおよめさんになる!」って言ってたけど……あれ、ひょっとして…本気だったとか…?」
リナが聞くと、
「うん、もちろん」
あっさり肯定。
「…シルフィ。あなた将来大物になるわよ」
「?」
「話を戻すけど…あなたがまだ小さい頃から、グランはあなたをとても可愛がってたわ。グランにとっては、一番祝ってもらいたいのは、あなたなんじゃないかしら」
「私…に……?」
「そう。だから、当日はちゃんと祝ってあげなきゃ。あなたの武器の、最高の笑顔でね」


部屋に戻るなり、シルフィは受話器を取った。
1つ1つ、丁寧にダイヤルをしていく。
数回の呼出音の後、電話を取る音が聞こえる。
「もしもし。………フィーユさんですか?」




結婚式、2日前。

『フィーユ。グランを知らないか?』
フィーユが電話を取るなりウェルが聞いてきた。
「グラン?」
『うん。さっき電話をしたらいなかったんだ。シルフィに聞こうかと思ったんだけど、シルフィもいないみたいでさ』
「ああ、2人なら今日は多分1日家にはいないわよ?」
『どうしてだ?』
ウェルが聞いた。
「実はね、何日か前にシルフィから相談を受けたの。『どうやってお兄ちゃんを祝ったらいいのか分からない』って」
『それで、君は何て答えたんだ?』
「『あなたの思う通りに祝ってあげたらどう?』って」
ウェルは少し黙ってから、
『…回答が適当すぎやしないかい?』
「千差万別。祝い方だって、人によって違うものよ」
『それはそうだけど…』
「特別にキス許可も出したわ。ただし、結婚式前日まで…今日と明日の2日間で1回だけのスペシャルカードとしてね。どこで使うかはお任せにしたわ」
『……相変わらず、時々だけど突拍子も無い事を考えるね、君は。そんな事まで許すなんて』
「褒め言葉として受け取っておくわ。それじゃ、当日に」
『ああ。それじゃあ』


「シルフィのヤツ…こんな所に呼び出して、いったい何だろう…」
1人広場に立つグランは、ぽつりと呟いた。
「ごめんね、お兄ちゃん! 待たせちゃって」
走ってきたのだろうか、息を整えながらシルフィが言った。
「何だっていきなりこんな所に…」
「いいからいいから。さ、行こっ!」
そう言うなり、シルフィはグランを半ば強引に引っ張っていった。


「で、何でまた」
ようやく発言の機会を得たグランがシルフィに聞く。
「お兄ちゃんが結婚するから、私流にお祝いしてあげようと思って。……迷惑、だった?」
「いや、祝ってくれる事自体は嬉しいんだけど…」
「けど?」
「わざわざ連れ出さないで、祝ってくれるなら別に普通で良かったんだけど…」
「うーん…それはそうかも知れないけど…」
シルフィが困った顔で答える。
(そういえば…具体的に何をするか考えてなかったかも…)
無計画だった自分を恥じたが、もう遅かった。
「その姿勢は、嬉しいけどな。…さてと、何か食べるか。行くぞ」
その日は結局、普通の『お出かけ』になってしまったのであった。


「はぁ…」
シルフィは部屋で何度も溜息をついていた。
「失敗しちゃった…」
その時、電話が鳴ったが、誰かが出たらしくすぐに呼出音は止んだ。
しかし、程なくして再び呼出音が。通常の呼出音ではなく、1階の親機からの呼出音だった。
「はーい」
シルフィは受話器を取る。
『シルフィ。フィーユから電話が入ってる。回すぞ』
「フィーユさんから…?」
一旦電話が切れる音が聞こえ、すぐにフィーユの声が聞こえてきた。
『どうだった?』
「どうもこうもないですよ…」
『…?』
シルフィは、フィーユに今日あった事を説明した。
『そう…グランはそう言ったのね』
「はい…」
『確かに、グランの言う事には納得は出来るけど…』
フィーユは少し考えてから、
『勝負は明日ね。グランに喜んでもらえるように、頑張って』
「え…でも具体的に何をすればいいか…」
『そういうのってね、自然体で結構何とかなるものだったりするわ。それじゃあね』
フィーユは電話を切ってからも、シルフィはしばらく受話器を持ったまま。
「自然体、かぁ…」



結婚式、前日。

「いよいよ明日ね。心の準備は大丈夫?」
リナが聞いた。
「日程が決まってから、心の準備は出来てるつもりだったけど、いざ明日ってなると緊張するものだよ、姉さん」
「そう…あなたにとっては、一世一代の晴れ舞台だから、しっかりしなさいね」
「分かってるよ。それにしても…父さんと母さんがこんな時に限って不在なんてな」
「滞在先から明日直接来るそうだから、来ないなんて事は無いわ。とにかく、今日は3人よ。シルフィ」
「えっ…あ、何…?」
「…大丈夫?」
リナが心配そうに尋ねる。
「う、うん…」
「今日の夕食は、私達でグランの為に腕を振るわないとね。そうでしょう?」
「そ、そうだね、お姉ちゃん。私、頑張る!」


その頃。
自分以外誰もいない自宅にフィーユはいた。
「ナナシマを回った後に引っ越して…コロシアムに参戦する時にここに戻ってきて…それからずっと、ここで1人で暮らしてたんだっけ…」
過去を1つ1つ思い出しながら、フィーユはアルバムのページをめくる。
「この写真…ナナシマでの戦いが終わって、みんなと別れる前に撮って…こっちは、コロシアムの表彰式の後の…」
自分が、ここまでの人生で辿ってきた道。それが思い切り詰め込まれているこのアルバムは、フィーユにとっては宝物だった。
そして明日。このアルバムに、また新たな思い出が刻まれようとしている。
「…そうだ、忘れてた!」
フィーユはクローゼットに駆け寄ると、勢いよく扉を開けた。


「えーっと…これと…あと、これと…」
リナに頼まれ、シルフィは街で食材の買出しをしていた。
「お姉ちゃんと一緒に料理するのってすっごく久しぶりだし、張り切らないと」
そしてその料理を振舞う相手が兄である為、シルフィのやる気は最高潮に達していた。
「……うん。ここでの買い物はおしまい、と…」
店を出た時、シルフィはフィーユの姿を見かけた。しかし、フィーユの方は気付いていないようだった。
「あの服…」
シルフィはフィーユを追いかけ、声を掛ける。
「フィーユさん?」
「えっ?」
突然声を掛けられて驚いたらしい。
「どうしたんですか? それに、その格好…」
「ああ、これね…今からちょっと、行く所があって」
「行く所、ですか?」
フィーユは頷き、そして続ける。
「私の……お母さんのお墓に。まだ、結婚するって報告してなかったから…」


シルフィは、言葉を失った。
「え……」
「…話してなかった? 私の母親は…もう居ないの。…私がまだ小さい時に」
「病気か…何かだったんですか?」
シルフィが聞くと、フィーユはゆっくりと首を振り、
「……殺されたの」
「……!?」
「そう、確か…私がまだ4歳の時だったかしら…」
シルフィは、言葉が発する事が出来ずにいた。
「…ごめんなさい。こんな暗い話して。……その荷物、ひょっとして、グランに何か作ってあげるの?」
「え…あ、はい。お姉ちゃんと一緒に…」
「そう…それだったら、彼もきっと喜んでくれると思うわ。頑張ってね」
それだけ言うと、フィーユはシルフィの前から歩き去っていった。


買い物を終えて家に戻ったシルフィは、真っ先にグランの所へ向かった。
「お兄ちゃん…ちょっと、いい?」
「ん? ああ…どうした、改まって」
「その…ここじゃ……」
シルフィの表情からグランは何かを感じ取ったらしく、
「…分かった。じゃあ、ボクの部屋で」

部屋に入り、グランは椅子に腰を下ろす。
「…で、どうしたんだ?」
「その…フィーユさんの事、なんだけど…」
「何か?」
「うん…さっきフィーユさんに会ったんだけど、彼女のお母さんって…」
「…ああ。もう既に亡くなっているって聞いてる。一人っ子で、父親に育てられたって」
「じゃあ……」
シルフィが全てを言う前に、
「理由も知ってる。3年くらい前に、本人から直接聞いたよ」
「フィーユさんって…それでも弱い所を見せようとしないなんて…」
シルフィが言うと、グランは首を振った。
「いや…必ずしも、そうじゃない」
「え?」
「時々、相談してくるんだよ。…幸せそうな親子を見てると、胸が苦しくなる…って」
グランは椅子ごとシルフィに背を向け、続ける。
「だから、その分アイツは家族に対する憧れが他の人よりも強いんだよ。当然といえば当然かも知れないけどな」
「そういえば…フィーユさんが前に私とお兄ちゃんを『羨ましい』って言ってた事があったような…」
「それも今言った事が理由だよ。アイツは…幸せな家庭を作りたがってる。それに、ボクも答えてやらないと」
グランは立ち上がり、シルフィに向き直る。
「ところで、姉さんを手伝わなくていいのか?」
「…あ、いけない!」
シルフィは慌てて部屋を飛び出していった。
「階段から転がり落ちて怪我なんかするなよー?」
とりあえず注意すると、グランはベッドに寝転んだ。
「フィーユ、か……思えば、長い付き合いになったもんだな…」


その日の夜。
「……」
グランが呆気に取られるような量の料理が、テーブル上に所狭しと並べられていた。
「…何だ、コレ」
思わず聞くと、
「もちろん、私とシルフィが腕によりをかけて作った料理よ」
リナは自信満々で答えた。
「…姉さん。多すぎやしないか? 食べすぎで腹痛起こして結婚式出られませんってなったらシャレにならないぞ」
「大丈夫よ。私達も食べるんだから」
「いや、そういう問題じゃなくて…;;」
「お姉ちゃん…やっぱり、ちょっと作りすぎなような…」
「そう? じゃあ残った分は…明日の夜のおかずにでもしましょうか」
そうくるか、リナよ。


「結局…全部綺麗に片付いたなぁ…」
部屋で1人、グランが呟いた。
「まぁ、後片付け大変そうだったけど…」
そして、机の上に置いてある案内状に目をやる。
「明日の11時、か…」
開始時刻を確認すると、
「さて…遅くなると明日起きられなくなるし、寝るか…」
グランが電気を消そうとした時、ドアをノックする音が聞こえた。
「お兄ちゃん…起きてる?」
「ああ。…どうした?」
ドア越しに聞くと、扉を開けてシルフィが入ってきた。
「あのね…お願いがあって来たの」
「…?」
「今日…隣で寝ても…いい?」
「は?」
グランは呆気に取られて聞き返した。
「お願い…今日だけでいいから」
「……」
グランはしばらく考えていたが、
「まぁ…今日だけは許してやるか」
グランの言葉に、シルフィは満面の笑顔で答えた。

「こうやって…お兄ちゃんの隣で寝るのって、何年ぶりかな」
「知るか。少なくとも、お前の年齢がまだ1ケタの時だった事しか覚えてないぞ」
電気を消して暗くなった部屋に、窓から月の光が差し込んでうっすらと明るさが生まれている。
グランは天井を見つめたまま返した。
「私ね…お兄ちゃんに彼女が出来たって聞いた時、とっても驚いたの」
「それは聞いた覚えがあるな」
「それで…こんな事言うと怒るかもしれないけど…私、その人からお兄ちゃんを引き離そうと考えた事もあったの」
グランは目線だけをシルフィに向ける。
「でも…出来なかった。…相手がフィーユさんだったから」
「…理由、聞いてもいいか?」
「本当に単純な事だよ。『フィーユさんの人柄に触れた』から」
「アイツの…人柄に?」
シルフィは軽く頷き、
「しばらく接してみて、ダメだって判断したら、引き離そうって。…でも」
「引き離せるような状態にならなかった、と」
「フィーユさんって本当に優しくて…私の事もちゃんと気に掛けてくれて…本当のお姉さんみたいな感じの人だった」
「一度も言わなかったけど、フィーユ本人も、お前の事は本当の妹みたいに思ってたみたいだぞ」
「フィーユさんが…?」
「昨日も話したと思うけど、アイツは一人っ子だろ。だからさ」
シルフィはしばらく黙っていた。
「…お兄ちゃん。1つだけ聞かせて」
「?」
「本当に…フィーユさんと結婚しちゃうの?」
「…ああ。もう決めた事だから」
「……」
数秒の沈黙の後。
「……だよ」
「?」
「そんなの、いや!」
同時に、シルフィはグランの胸に顔を埋めた。
「いや…いやだよ……!」
「……」
グランは困った顔をしていたが、
「…どうして、そう思うんだ?」
いたって落ち着いた口調で聞いた。
「お兄ちゃんが……手の届かない所に行っちゃいそうだから……」
「まったく…」
グランは軽くシルフィの髪を撫で、
「どうしてそこまで言うのか考えてみたけど…なるほど、よく考えてみれば、ボクはお前の面倒ばかり見てたっけか」
少し甘やかしすぎたかなとも思ったが、言わないでおいた。
「うん…だから私、ずっと自分の傍にお兄ちゃんがいるものだと思ってた。…でも、違ったんだよね」
やっぱり甘やかしすぎたかな。天井を見上げながらグランはそう思っていた。
「…ねぇ、お兄ちゃん」
「?」
グランがシルフィの方に顔を向ける。
「えいっ」
小さな掛け声。
「……!?」
「……」
数秒立ち、シルフィが笑顔になる。
「何の考えも無しに私の方向いたから…キス、しちゃったv」
「…ポーカーフェイスの恐ろしさを今更ながら知った瞬間だったぞ」
「私としては、もう満足だよ。…お兄ちゃんの唇、もらっちゃったv」
グランは額に手をやり「やれやれ…」と呟く。
「あ、一応言っておくけど、フィーユさん公認だよ」
「…何考えてるのかたまに分からなくなるんだよな、フィーユって」
「でも…これが、最初で最後なんだよね」
「…お前、仮にボクがフィーユと結婚しなかった場合でもするつもりだったのか?」
「…ダメ?」
「当然」
グランはキッパリと言い切った。
「えー…お兄ちゃんのいじわる…」
「いじわるも何も…」
「とにかく…ありがと、お兄ちゃん…」
「どう返せばいいか分からないけど…取りあえず、早く寝ろよ。明日は早いぞ」
グランはシルフィに背を向けた。
「はーい」
シルフィは目を閉じると、小さく呟く。
「お休み、お兄ちゃん…」


結婚式、当日。
朝日が窓から差込み、シルフィはその光で目覚めた。
部屋の時計を見ると、まだ早朝だった。
シルフィは隣を見る。
「お兄…ちゃん…?」
グランの姿はなかった。
シルフィはベッドから降りると、ドアを開ける。
下の階のどこにも、グランの姿はない。
「シルフィ? どうしたの、こんな早くに」
キッチンに向かうと、既に起きていたリナが聞いてきた。
「ねぇ、お姉ちゃん。お兄ちゃん知らない?」
「グラン…? 部屋にいないの?」
「いなかった。昨日はお兄ちゃんの隣で寝てたんだけど…いつ起きたんだろ…」
「…シルフィ、未だにグランと一緒に寝たがるのね」
「ダメなの?」
「流石にあなたくらいの年齢になるとそういう人は珍しいと思うけど…」
リナは苦笑した。
「お兄ちゃんったら、一緒にお風呂入ろうって言っても断るんだもん…」
「…よく頼めるわね、そんな事」
「とにかく、ちょっとお兄ちゃん探してくるね」
そう言うと、シルフィは玄関へと向かっていった。
「兄好きもここまで来ると…流石に引いちゃうわね…」
少し呆れ気味にリナは呟くと、朝食の準備を再開した。

玄関を開けるや、朝の日差しが照りつけてくる。
シルフィは一度目を閉じ、ゆっくりと開く。
「…あ」
シルエットですぐにグランだと分かったシルフィは、駆け足で向かう。
それに気付いたのか、グランは振り向いた。
「早いな。珍しい」
グランの服装は、剣道の早朝練習でいつも着用している袴姿だった。手には竹刀を持っている。
「お兄ちゃんこそ、こんな早くにどうしたの?」
「それはもちろん、朝練に決まってるだろ」
「…普段と変わらないね。今日が当日だから、もっと普段と違うのかなぁって思ったんだけど…」
「変に意識してたら、逆に落ち着かないからな。自然体でいるには、普段通りにした方がいいと思ってさ」
グランは「そうだ」と前置きしてから、
「せっかくお前が早く起きてきたんだ。稽古つけてやる」
「…え?」
シルフィが呆気にとられて返す。
「反論は絶対受けない。さぁ、さっさと着替えてこい!」
(始まっちゃった…お兄ちゃんの『鬼コーチモード』が…;;)
家に入ろうとすると、シルフィはふと、
「…ねぇ、ちょっと待って」
「何だ?」
「朝練習…ここでやるの?」
「たまには外でもいいだろ。今朝は野外練習だ」
「はーい…」

「いいか。今回は実戦形式だ。…手加減はしないぞ」
「え、でも私もお兄ちゃんも面付けてないよ?」
「…流石に面を付けてない状態で思い切り叩くって事はしないさ。…いくぞ!」
「え、ちょ…」
シルフィが竹刀を握りなおすより前に、グランの竹刀がシルフィのそれを弾き飛ばしていた、
「!!」
シルフィが思わず目を閉じる。
「はい、終わり」
グランは竹刀でシルフィの頭を軽く叩いた。
「お兄ちゃん…早すぎ」
「シルフィは隙を見せすぎだ」
「むー…」
「これじゃ、まだまだ鍛える必要がありそうだな…」
その言葉を聞いたシルフィは、
「…もしかして、結婚してもこの朝練習…やるの?」
「当然」
グランは言い切ると、家の方に向かって歩いて行く。
「さぁ、戻るぞシルフィ。そろそろ、朝食準備も終わる頃だろうからな」


数時間後…

「ここか…」
1人式場に訪れたグランは、ゆっくりと中に入っていく。
「よぉ。来たな」
早速出迎えたのはグロード。既に黒のタキシードに衣装変えをしている。
「フィーユならもうとっくに来てるぜ。ドレスの着付けをやってる最中だ」
「分かった。…じゃあ、ボクも準備しないとな」
「周りの期待を裏切らねぇ式にしろよ。オレ達もそれを望んでるんだからな」
「…どんな期待だよ」
グランは苦笑し、控え室へと消えていった。
それと前後するかのように、グロードの元にウェルがやってくる。
「グランは、もう来たのかい?」
「ついさっき来た所だ。控え室に入っていったぜ」
「そうか…いや、フィーユがグランと話したがっていたから、来たら呼んでもらおうかと思ったんだけど…」
「別にいいんじゃねぇの? どうせ控え室は隣同士なんだし」
「それもそうか。…2人がどんな姿で出て来るのか、今から楽しみだよ」
控え室の方に目をやりながらウェルは言った。


開始時間。

教会は、既に多くの人々で埋め尽くされている。
「…す、凄い人」
「流石に、グランとフィーユが結婚するとなると、このくらいは集まるか」
グロードが頷きながら言った。
「こんなにたくさん…グロードさんが集めたんですか?」
「いや、オレはただ『グランとフィーユが○月×日に結婚式をする』って話を流しただけだぜ」
「…噂って怖いわね」
リナが呟く。
「さぁ、グロード。そろそろ準備をしないと」
「おっと、そうだった!」
グロードとウェルは、教会前に駆けていく。
すると、どこからともなくマイクを取り出した。
『みんなぁ! 待たせたなぁっ!!』
「…お姉ちゃん。結婚式の司会って、あんなのじゃないよね…?」
「少なくとも、グロード君みたいにやる人は私は見た事が無いわね」
しかしこんな風にやるんです。何故って、司会がグロードですから。
『今日は、この街のビッグカップルであるグランとフィーユが遂に結婚する事になったぜ!!」
グロードの言葉を合図に、観衆からの歓声が飛び交う。
「…でも客受けはいいみたいよ、シルフィ」
「流石グロードさん…」
『思えばオレももどかしかった。コイツらはいつくっつくんだいつくっつくんだと心労が耐えずに…』
「…グロードさんが何か語りだしたね、お姉ちゃん」
「宴会では絶対に盛り上げ役を任されそうなタイプね」
『さーて、いよいよ幸せいっぱいの2人に登場してもらうぜ! オープン・ザ・ドア!!』
英語かよ。
それはさておき、グロードの言葉を合図に、ゆっくりと扉が開いていく。
ギャラリーが固唾を呑んで見守っている。


それより少し前。

控え室の電話が鳴った。
「はい」
『グラン様…そろそろお時間ですので、ご準備を…」
「わかりました」
グランは受話器を置き、もう一度白のタキシードを確かめる。
「…よし!」
グランが控え室を出ようとした時、再び電話が鳴った。
首を傾げながら応対する。
「はい」
『グラン様、急ぎのお電話が入っておりますが…』
「ボクに…? …分かりました。繋げて下さい」
グランが言う。すぐに電話が繋がったらしい。
「はい…」


時間は戻り、扉がゆっくり開いていく。
完全に開いた瞬間、観衆からは割れんばかりの歓声が飛び交った。
「凄い…フィーユさん、今までで見た中でも今日は一番綺麗……」
「彼女、何でも着こなしてしまうから凄いわよね…スタイルも凄くいいし」
「あはっ…お兄ちゃん、何かちょっと緊張してるみたい」
「でも、ちゃんとエスコートしてあげてる。グランもやるじゃない」
そのグランとフィーユは、時折互いに微笑みあいながら歩いてくる。
階段に差し掛かったその時だった。
「……!」
「きゃ…!」
突如グランがフィーユに飛び掛り、フィーユが短い悲鳴をあげて2人とも倒れこむ。
それと同時に、何かが地面に強く叩き付けられたような音がした。
「な、何!?」
「犯人は、そこだ!」
驚くフィーユを余所に、グランが叫び指差す。
「任せな」
少し遠くで、その周囲にしか聞こえない程の声で誰かが答える。
「まさか、オレが依頼を受けたお尋ね者のアンタが、あの花嫁の母親の仇だったとはな」
「ちっ…」
フィーユを狙った男が、ライフルを構えなおす。
「おせーんだよ!」
誰かが叫ぶと同時に、別の誰かがライフルを武器で弾く。
「グッジョブ、リコ!」
誰かが言うと、リコと呼ばれた女性は、
「フィーユさんの母親の仇の男…まさか、あなたが確保依頼を受けた凶悪犯と同一人物なんて驚きましたよ、リク」
リコが言うと、リクと呼ばれた男は、
「オレはその逆のパターンで驚いたがな。…しかし、まさか結婚式に潜入調査をするハメになるとは…」
「私は構いませんけどね。いい写真をたくさん撮って帰るつもりですよ」
「あっそ。んじゃ…確保!!」
リクの言葉と同時に2人は飛び掛り、たちまちのうちに犯人をグルグル巻きで捕らえていた。


「グラン、今のは…!?」
抱き起こされたフィーユが、困惑気味に聞いた。
「お前の命を狙ってるヤツがいるって、控え室を出る前にボクの所に連絡があった」
「うそ…それって…」
「ああ。…お前がまだ小さい時に、お前の母親の命を奪ったヤツと同一人物だ」
「…!?」
「あの様子じゃ、今頃はボクに連絡してきたヤツに捕まってるだろう。今さっきのは、確保するタイミングを教える為だった。…悪いな、手荒な事して」
グランが謝ったが、フィーユはゆっくりと首を振り、
「ううん。…私の事、守ってくれたのよね。私だって、ここでむざむざと死ぬわけにはいかないもの」
「…だな」
「ところで、連絡してきた人って?」
「アイツさ。あのニ刀流の」
「ああ、いつかの…」
しかし、今教会前にいる面々で事態に納得しているのはグランとフィーユの2人だけ。
グロードを始めとした面々は、全く事態が飲み込めずにいた。
「オ、オイ。…なんだったんだ、今の」
事態を読み込めないグロードが聞いてきたが、
「いいや、別に」
グランが答えると、フィーユも頷いた。
「…?」


「さ、さて。何か訳が分からない事になっちまったけど、グラン達が遂に登場した。続行するぜ!」
グロードが言ったが、
「…オイ、ウェル」
「なんだい?」
「…こういう時ってよ、最初に何をすりゃいいんだ?」
グロードの言葉に、ウェルは「はぁ」と溜息をつき、
「キミって人は…;;」
半ば呆れ気味に言った。
「じゃあ…結婚するにあたって、2人からそれぞれ、挨拶を。まずはグランから」
ウェルが促す。
「えーっと…本日はお日柄もよく…」
「グラン…いつも通りでいいと思うわ」
フィーユが苦笑しつつ指摘した。
「そうか? それじゃ…」
グランは大きく深呼吸してから、
「えっと…見ての通り、ボク達は今日、結婚する事になった。正直、初めてフィーユと出会った時はこうなるとは思ってなかった」
グロードの司会で先ほどまでテンションが高くなっていた観衆は、全員静まり返っている。
「これまでの間に、亀裂が走ったこともあった。その時は、これでもう終わりかとも思ったけど…結果的には、今日まで漕ぎ着ける事が出来た。これもみんなのお陰だと思ってる。ありがとう」
「何だかベタな気がするけど…じゃあ、次はフィーユから」
「私も…最初にグランと会った時は、まさか将来彼と結婚する事になるなんて、全く思ってなかった。それに…」
フィーユはそこで一旦言葉を切り、
「一時的にとはいっても、私が彼の気持ちを裏切ってしまった事もあったし、それに…命を落としかけて、彼に大きな迷惑を掛けてしまった……でも、それでも…」
一度大きく深呼吸。そして言い放つ。
「私は……グランを愛してる!!」
『おおっ』とどよめきが起こり、それはすぐに歓声へと変わった。
グランは呆気に取られてフィーユの方を見た。
当のフィーユはそれに気付くと、笑顔でVサイン。
同時に、グロードがウェルからマイクを引ったくり、
「おおーっと! 新婦の堂々宣言! これには観衆も大満足間違い無しだ! なぁ、みんな!?」
ここで一度咳払いし、
「さて、大いに盛り上がってきた所で……皆様お待ちかね、この2人に誓いのキスをしてもらおう!」
グロードが言うや、観衆は拍手大喝采。さらにテンションが上がっている。
「……マジか」
「でも、これをしないと結婚したって実感、沸かないんじゃない?」
グランは少し考え、
「グロードの音頭でするっていうのはどうにも気に食わないんだけど……」
辺りの観衆を一度見回し、
「けれど…これから先、お前と歩んでいくって事を、ここに居るみんなに誓うって意味では…避けては通れないよな」
「そういう事ね」
互いに見つめあう2人。観衆が無言で見守っている。
距離がゆっくりと近くなり、そして唇が重なる。
それを合図に、これまでで一番大きな大歓声が沸き起こった。
口々に『おめでとう!』や『幸せになれよ!』との言葉が飛び交う。
「おめでとう、お兄ちゃん、フィーユさん!」
シルフィも回りに負けないように祝福を贈る。
「くーっ! オレは今、最高に感動しているっ!」
グロードが1人、彼にしか分からない得体の知れない何かを噛み締めている。
「フィーユ。…何だかやけにテンションが高いバカがいるぞ」
「…そうね」
数秒間唇を重ねていた2人は、互いに離れるや言った。
そして、グランがグロードの傍に歩いていく、
「ちょっとは自重って物を覚えろ」
グランはグロードの頭に軽く手刀をお見舞いした。
「いてーなー! オレはみんなが満足するような司会にしようとしてだな…」
「普通はあんな進行しないだろ!」
「そうね。私も過去に結婚式を見に行った記憶があるけど、グロード君みたいな進行はしてなかったわよ」
グランとフィーユが口々にグロードへと詰め寄る。
「まぁ、いいんじゃないか? 観衆の皆さんも楽しんでいるようだし」
「…なんか釈然としないぞ」
ばつが悪そうにグランが言った。

「すみませーん! 写真撮らせてくださーい!」
誰かがグラン達に向けて手を振っている。
「あれは、さっきの…」
グランの視界が認めた人影は2つ。男性と女性1人ずつ。
「1人はリクだけど、あとの1人は……そういえば確か…いつかのバレンタインの時に、リクを追いかけてきた中にいたような…」
フィーユが考えていると、2人がグラン達の近くに到達した。
「…その人は?」
グランがリクに聞く。
「リコ。フリーのジャーナリスト。オレが依頼を受けたお尋ね者に関する情報を仕入れたヤツだ」
「凄い…フィーユさん、本当に綺麗ですねー」
リコがしきりにシャッターを切っている。
「…あれ? でも、どうして私の名前を?」
「その筋では有名なんですよ」
リコは、以前過去に向かった際に幼少期のフィーユと出会っているが、口にはしなかった。
「ところで…みなさんで集合写真を撮りたいと思うんですけど…かまいませんか?」
「ボクは構わない」
「私も」
「それじゃ…グランさんとフィーユさんと…お友達の方もどうぞ。それと…」
「姉さんとシルフィも忘れないでくれよ」
「もちろんですよ。あ、それから…」
リコは、少し離れた所で腕を組んで空を見上げているリクを捕まえ、
「リクもですよ」
「はぁ? オレは関係ねーだろ」
「曲がりなりにも、この新しい夫婦の未来を救ったのはあなたなんですからね。写真に入る義務が生じますよ」
「…理不尽だ」
「ちなみに私もオートシャッターで入りますので」
「このちゃっかり者が!!」
今日もリク君のツッコミは元気です。

「それじゃ、いきますよ。…って、何で横向いてるんですか、リク」
「別に…」
リクは一番左端に陣取り、横向きのまま腕を組んでいるだけ。
真ん中の正面左がグラン、右がフィーユ。グランの腕に自身の腕を絡ませている。
グランの左にシルフィが立ち、フィーユの隣にはリナが立った。
グランとフィーユの後ろにはグロードとウェルが立つ。
「ちょっとリクの立ち位置が気にいりませんけど…しょうがないですね」
リコがタイマーをセットし、駆け足でリナの隣に立った。

数秒後、フィルムには思い出のシーンがまた1つ刻まれる事となった。



「そうだ、フィーユさん!」
シルフィが手を振りながらフィーユを呼んだ。
「まだ大事な物が残ってますよー!」
「大事な物…?」
フィーユが怪訝そうな顔をする。
「ブーケトスですよ、ブーケトス!」
「え…あ、そうね。それを忘れたらダメよね」
そう言うと、フィーユは後ろを向いた。
「おっと、これからフィーユがブーケトスをするみたいだぜ! 次に幸せになりたい女性は前に出てくれ!」
グロードの言葉を合図に、観衆の中からは女性が大勢抜け出してくる。
「それじゃ……いくわよ!」
後ろを向いたまま、
「それっ!」
ブーケを思い切り投げた。
それを合図に、女性陣がブーケの行方を追い始める。
我先にとばかりにブーケへと目標を定めるが、
「あ……」
出遅れていたシルフィの手の上にすとんと落下した。
「…動いてないのに取れちゃった」
シルフィは苦笑して言った。
「まさしく、棚から牡丹餅ね」
リナが笑った。




「さて、今度は、オレとウェルが企画した、スペシャルイベントだぜ!」
「まだ何かやるのか?」
再びマイクを持ったグロードに、呆れてグランが聞いた。
「グランにフィーユ。お前らの出会いは、そもそもはポケモンからだった」
いきなり真面目な事を振られ、
「まぁ…そうだったよな…」
「ええ…そうだったけど…」
2人とも多少困惑気味。
「そういうわけで、こんな物を用意したぜ! ウェル!」
「ああ。もう準備はできている」
「「あ、それ!」」
グランとフィーユが同時に声を上げた。
それは、5年前、2人が旅に出た時の服。
「お前らには、これからそれぞれこの服に着替えてもらって、この場で1対1のポケモンバトルをしてもらおうと思ってな」
「ドレスを着るのにも結構苦労するのに…;;」
フィーユがぼやく。さらに、
「それに、これ…5年前のでしょ? どうやって手に入れたのかも気になるし…その前に、サイズとか大丈夫かどうかも不安なのに…その……胸、とか…」
恥ずかしそうにフィーユは言ったが、
「その辺は抜かりないぜ。ちゃんと今のお前らに適応するように作り直してあるからな」
「…ボクはともかく、どうやってフィーユのサイズ情報入手したんだよ」
「別に特別な事は何も。オレのカン、それと目視だけだぜ」
「…よくカンと目視だけで作れたわね」
フィーユは半ば呆れながら呟いた。
「オレの母親はそれなりに有名なデザイナーだからな」
理由になってない。
「そんなワケだから、さっさと控え室に戻って着替えた着替えた!」


「まったく…やっぱり突拍子も無い事を考えるよなぁ…」
着替えを済ませ、控え室を出るなりグランが呟く。
「けど…懐かしいな、この服」
「本当ね」
グランの言葉に答えるかのように、フィーユが歩いてくる。
「…その服装のお前を見るの、何年ぶりだろうな」
「私も、その服のグランを見るの、久しぶり」
「……懐かしいな。もう5年も前か」
「そうね…5年前のあの日から、全てが始まったのよね」
「そして今日に、またこの服装でのポケモンバトルの再来、か…」
「何だか…運命的な物を感じるわね」
「ここまでくると、あるいはそうなのかもな。…じゃ、行くか」
「待って」
フィーユは辺りを見回す。
「誰も…いないみたいね」
「?」
「さっきは、みんなの前でだったから、今回は2人きりで…ね?」
「……お前らしいよ」
周りに誰もいない、2人だけの口付け。
それは、真の意味での誓い。共に歩むという、堅い約束。
唇が離れ、二人は微笑む。
外からは、僅かにではあるが2人の登場を待つ声が聞こえてくる。
「……さぁ、行くぞ! 負けないからな!」
「私だって!」
グランとフィーユは、皆が待つ所へと駆け出していった。
2人の旅路は、まだ始まったばかり……


                END






あとがきっぽいものを書くべきでしょうねぇ…こういう場合。
そんなこんなでカナエさん御所望のグラフィーウエディングSS…なんですが…
そこに至るまでに心情の方がクローズアップされまくってる気がします。特に妹さんの((
ただ、書く時はその点を多く入れて書いてみようとうっすらと考えてはいたので、考えてた形にはなったのかなぁ、なんて。
そして、結婚式に全然関係ないキャラが2人ほど登場してます(ァ
スミマセン。ダメトレはチョイ役でも出したかったのと、ジャーナリストは写真撮影に必要不可欠だろうと考えた次第で…
じゃあどうやって登場させようかと悩んだ結果、ヒロインさんの母親の仇を捕まえにくるという設定で登場してもらいました。
…無理矢理な感が否めないですね。
それでもって、私自身はウエディングSSを書く時は思冒を完結させる時だと考えています。
まぁ、シリーズとしては完結、後日談とか過去の話は細々と書いてくって感じかな?
…でも過去の話の方が登場人物の年齢的にも書きやすいんだけど(斬
あ、念のために書いておくと、このお話での2人は20歳です(何
話の中には、思冒シリーズを最初から読んでる人なら「あったあった、そういう話!」となるような部分もちらほらと見つけられると思います。



正直、これを6月中に完成させるのは無理かなぁとも思ったんですが、深夜のテンションってのは恐ろしいもので(笑
ここ6日ほど毎日書き進めてました。こんなに連続して執筆したのってどのくらいぶりだろ。ひょっとして初めてかも(ぇぇ


以上、あとがきでした。
感想などはご自由に。
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Comment

やっと見れた! いきなりネット不通とかひどい><

ご結婚おめでとうございます^^* ポケモン会で結婚式ってどこでするものだろうー。
シルフィさんのブラコンさ加減に毎回びっくりしっぱなしです。総帥のご趣味でしょうか(ァ
グロードはあいかわらずのノリですね^^ けっこう好きです、喋ると3枚目ってキャラ(ァァ
そしてグラフィーのおふたり(何)は成長したなぁーって思います。
グランは頼もしいし、フィーユもかわいいです、いい女です!
ひさびさに全話読み返しとかしてみたいですね、時間がほしいなぁ><

バトルが終わったらまたドレス着ますよ…ね?(何)
晴れ着のおふたりを後日お借りします(ォ
kanae | 2009年07月01日(水) 20:55 | URL | コメント編集

>カナエさん
いきなりネット不通とは…これはひどい(苦笑

ポケモン界の結婚式…うーん、ヨスガに外国っぽい建物あるし、そういう所とか候補に上がるんじゃないでしょーか?(ぇ
なんか建物の雰囲気的に…って、ちょっと無理がありますか;;
ちなみに、思冒始まりの地(謎)はシリーズには無い街です。名前自体決めてないし(滅

妹さんのブラコン加減は…はい、お察し通りほぼ私の趣味です(爆
それに、最初に登場させる時に「かなりのシスコンな上にこれ以上ないブラコン」を基本コンセプトとして登場させたので(ぇぇ
しかも、登場する毎にそれが加速しているのがある意味で怖い(ァ

ツンツン頭は相変わらずです。こうじゃなきゃグロードじゃねぇ!(笑(斬
そういえば「しゃべると三枚目」って称号がシンフォニアにあったなぁ(何
しかし、外見がグリーンである事を考えるとこの性格設定はどうかという気がしていますが(ぇ
それこそ、思冒を始めた結構初期の頃から(ァ

グラフィー2人は…年齢を経て精神的にも成長はしていますが、本質的な所はさほど変わっていません(ぇ
まぁ、ヒロインさんに関しては初期のテンションは鳴りを潜めてますが…
ちなみに、全話読み返す時は注意してくださいね。文章形式が私にとっては黒歴史ですから(ぇぇ
少なくとも、私は読む勇気が無いです(斬

そうそう、あの服装は試合限定です。
バトル終了後にまた着替えさせられたし、2人は相当ご立腹だったでしょうね(蹴
で、試合の結果は敢えて書いてません。戦いに向かう所で切ってます。
その方が想像も膨らむし、何よりマンガとかの「最終回」だとこういう終わり方ありますし(ァ
まぁ、試合終わった後はパーティ会場かどっかでツンツン頭の司会でどんちゃん騒ぎしてたんでしょうけど((


どうぞご自由に描いちゃってください(ォ
Riku | 2009年07月01日(水) 22:17 | URL | コメント編集

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