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2010.05.18(Tue)

全てを砕け 

何かしら書かないといけないと思うけど、ネタが出てこないんだ((
タイトルは、たまたま聞いてたテイルズオブナイツでアビシオンが叫んでたフレーズから。
電話で急に出たネタだ((


誕生日、おめでとう!!
そして、すまん!!(ぇ



                  光を失いし者   


無意識のうちに私の心は弾んでいました。
と言っても、彼と一緒にいる時はいつもそうなんですけどね。
今日は初めて、彼の家で、彼の為に私が腕を振るう事になっているんです。
食材もしっかり購入しましたし、後は彼の所に1分でも、1秒でも早く向かうだけ。
喜んでくれたらいいな…


彼の家に辿り着いた私は、さっそく呼び鈴を鳴らしました。
笑顔で出迎えてくれると期待しながら、私はドアの前に立っています。
ですが……なかなか彼が出て来ません。もしかして、照れているんでしょうか?
そう思いつつも、私はもう一度呼び鈴を鳴らします。
でも、それでも彼は出てきてくれません。
駄目で元々と思いながらも、私はドアノブに手を伸ばし、回して、引いてみました。
「あれ…?」
思わず私は声に出してしまいました。鍵が掛かっていなかったんです。
無用心だなと思いつつ、私は中に入ってみました。
家の中はとても静かで、それが逆に気味が悪いくらいです。
様子がおかしい。そんな不安を抱きながら、私はリビングの方へと歩いていきました。
「お邪魔、します…」


リビングで私が見たのは、変わり果てた姿となった想い人でした。



思わず私は食材の入った袋を床に落とし、ゆっくりと彼の元に歩み寄りました。膝がゆっくりと折れていきます。
頭の中は真っ白で、自分の目の前に広がっている光景がとても信じられませんでした。
「う……そ……」
血溜まりの中、仰向けに倒れている私の想い人は、ピクリとも動きませんでした。
「誰が……誰が……こんな……」
既に放心状態に近かった私の目に留まったのは、見覚えのある髪留め。
「これ……」
この髪留めを使っている人は、きっとたくさんいるでしょうけど、私が知る限りではたった1人だけ。
「そういう……事だったんですね……」
私はゆっくりと立ち上がりました。
「そう……そうなんですね……。…っく……ふふふ……あはっ……あははっ……」
この時の私は、もはや放心状態を通り越してしまっていたような感覚があったんです。
私の中で渦巻いているのはただ1つの感情。……憎しみ。


「あははははははははははははははははははははははっ!!」



所変わって、リクの家。
ポストから郵便物を取り出したセリアは、そのうちの1つに目を留めた。
「あの…リクさん?」
「あー?」
セリアに呼ばれたリクが、顔だけセリアの方に向けて返事を返す。
「リクさん宛ての郵便物に、差出人が書いてない物があったんですが…」
「差出人が書いてない郵便……ああ、アレか」
リクはセリアの所まで行くと、その封筒を受け取った。
「心当たりがあるんですか?」
「あるっつーかな、数ヶ月に1回来るんだよ。この差出人からな」
「どんな方なんですか?」
「ん…ああ、写真があるから、ちょっと待ってろ」
そう言うなり、リクは自室に引っ込む。
程なくして、1枚の写真を持って出てきた。
「この一番右に映ってるのが、差出人だ」
セリアが写真を受け取る。
「あっ…凄く可愛い方じゃないですか」
「この街じゃ男どもに一目置かれてたよ。ユキハってんだ」
リクに示された右側に映っていたのは、腰まで伸びる長い黒髪と抜群なスタイルが特徴的な少女だった。
「ついでに言うと、真ん中に移っているのがオレで、その隣がフィア。5、6年くらい前の写真だけどな」
「…あまり今と印象変わっていませんね、リクさんとフィアさんは」
「余計なお世話だ」
「それで…この方とはどのような…?」
セリアが尋ねる。
「いや、その…なんつーか…」
珍しく、リクの返答は歯切れが悪い物だった。
「その子さ…ちょっとワケありな子なんだよ」
リクが一旦言葉を切る。
「事故で亡くしてるんだよ。……恋人をさ」
「えっ…?」
「アイツは…その恋人を心の底から想ってた。それで、余程ショックだったみたいでさ。精神を病んじまったんだ。長い間、秘湯で治療を続けてた」
「…精神を治す秘湯ってあるんですか?」
「オレも信じらんねーけどあるらしいぞ、何か」
リクは「ともかく」と前置きしてから、
「だいたい、3年くらい治療してたな。それでようやく治って、引っ越してった。それから何ヶ月かしたら、引っ越した先で、親友と新しい恋人が出来たって、写真付きの手紙もらってさ」
「…? 話が見えないんですが…そもそもどうしてリクさんはこの方の事を…?」
「オレとフィアも、ユキハのケアにちょっとばかし協力してたんだよ。歳が同じって事もあったからな」
「そうだったんですか…」
「もう2、3年くらい会ってねーもんな。…っと、手紙には……」
リクはさっと手紙に目を通す。
「…へぇ。またこっちに戻ってくるんだと。恋人を見せびらかすつもりだな。ちっくしょ…」
リクは心底悔しそうであった。



夜。とあるビルの屋上に、私はいました。
彼を手に掛けた人物の目星は既に付いていたので、その人物をここに呼び出したんです。
私は物陰に隠れ、到着を待ちました。
「……」
階段を上ってくる音が途切れ、その人物が屋上に姿を現しました。
彼女は、辺りを見回していました。私を探しているようです。
私は意を決して、彼女の前に出て行く事にしました。

「どうして私があなたを呼んだのか……分かっているはずですよね?」
「……」
彼女は答えません。いえ、答えたくないと言った方がいいのでしょうか。
余談ですが、私がこのビルに訪れる為に道を歩いていた時、道行く人々は私とすれ違うと一度は振り返っていました。
どうしてなんだろうと、私はショーウインドウの前で足を止め、自らを確認してみました。
そこに映っていたのは、紛れもなく私でした。――瞳の輝きを失ってはいましたが。
話を戻しましょう。無言のまま、私と彼女は対峙していました。
その沈黙を先に破ったのは、私でした。
「これ……あなたの髪留めですね」
「…!」
彼女は少なからず同様している様子でした。やはり、彼女が彼の家に立ち入った事は間違いなかったようですね。
「どこでそれを…」
「…彼の家です。彼の傍に落ちていました。正確には…『彼の遺体の傍に』ですけれど」
「……」
「どうし……」
私は「どうして」と言い掛けたのですが、遮らざるを得ない状況でした。
彼女の様子が、明らかにおかしかったのです。
まるで、何かに取り付かれているかのように。
そこで私は、ある事を思い立ち、こう問いかけてみる事にしました。
「あなた……誰ですか?」
「……」
やっぱり。ほんの僅かではありますけれど、表情に同様が見られました。
『バレては…仕方ないか』
「!?」
突如、彼女が黒い霧に包まれ、霧だけが彼女の頭上へと抜けていったのです。
「ど…どういう……」
『人の心の中には……闇が存在する』
「…?」
『この女は…貴様と同じく、貴様の想い人の事を想っていた』
「それは……」
その事は…私も知っていました。彼女と私は親友同士。そして…同時にライバルでもあったんです。
最終的に彼が私を選んだ為に、彼女は身を退いた形になったのですが…
「確かに…確かに彼女は悔しい思いがあったかもしれない…未練もあったかもしれない…私を恨んでいたかもしれない…でも……」
私は伏せていた顔を上げ、
「でも…彼女のその悔しさを簡単に利用するあなたを、私は許せません」
『だから何だという…我がこの者の憎しみの感情を引き出してやっただけだ』
「…!」
その一言に、私の心の中に渦巻いていた憎しみは、全て別の所へと向けられました。
私の親友ではなく、私の親友を道具のように操り、そして彼を手に掛けた存在に。
『我を消すと言うか。ならば…』
突如、霧は私の目の前から消えてしまったのです。
私は辺りを見回しましたが、夜の暗さもあって見つかりません。
「!!」
突如、私の中に何かが入り込んでくるような感覚に襲われました。
(…! 体の自由が…利かない…!)
目の前が暗くなっていき、残されていたのは感覚だけ。
視覚が支配され、動く事も、自分の意思で声を発する事も出来なくなっていたんです。
自由を奪われた私は、親友に向かってこう言い放っていました。


「死んじゃえ……」


――伝わってきたのは、何かを切り裂いた感覚。




数週間後。
ふとカレンダーを見たリクが、
「そういや…明日だったか。アイツが来るのって」
「ユキハさんですか? そういえば…あの時以来、話が出ませんでしたね…」
セリアも思い出したように言った。
「にしては、未だに連絡が来ねーな。明日のいつ頃着くのかくらい知らせてきてもいいような気もすっけど」
『では、次のニュースです』
点けていたテレビでは、ちょうどニュースを放送していた。
『昨日までの数週間で、同じ街で若い女性が相次いで殺害されるという事件が発生しています』
「物騒ですね…ちょっと怖いです…」
「同じ街か…ただ事じゃねー事は分かるな」
しかし、キャスターが街の名前を読み上げると、リクは思わず立ち上がった。
「リクさん?」
「この街って……今、ユキハが住んでるトコだ」
「えっ…?」
「まさかとは思うけど…何か厄介な事に巻き込まれてなけりゃいいが…」
リクが言った直後、電話が鳴った。
『四の五の言わずテレビを見なさい』
いきなり用件を伝えてきたのはフィアだった。
「いきなり用件からかよ。テレビなら今見てるぞ」
『じゃあニュースに変えなさい。早く』
「だから今見てるのがニュースなんだっての。…まさかな」
『それなら話が早いわ。…まさかとは思うけど』
リクは受話器を握る力を少しだけ強くし、
「巻き込まれた……って事はねーだろうな」
『今の段階では何も言えないわね。新しい情報を待つしかないと思う』
「それだと情報入手遅くなるだろ。テレビとかじゃ限界あるぞ」
『仕方無いでしょう? どうしようもないんだから』
それだけ言うと、フィアは電話を切った。
「ったく…相変わらず言いたい事だけ言ってさっさと切るヤツだ」
リクは受話器を戻すと、再び取り上げ、ダイヤルを回し始めた。
「リクさん?」
怪訝そうな顔をしているセリアを尻目に、リクは電話の反応を待つ。
「オイ、ちょっと聞きたい事がある……」
電話が繋がるなりリクは切り出したが、
『すみません、今ちょっと手が離せないので後にして下さい』
すぐに切られた。リクは不機嫌そうな顔をしながら振り向き、
「ったく……」
悪態をつきつつ舌打ちした。
「あの…どこに電話を…?」
「リコだよ。あのジャーナリストなら、何か知ってるかも知れねーと思って連絡してみたら手が離せないからってすぐ切りやがった」
「それなら、また改めてかけ直しするしかないですね」
「情報無いと動きようがねーんだよなぁ、ったく…」


一方その頃。
「ここまで来れば……多分大丈夫……」
人気のない路地裏で、壁を背にリコは息を整えていた。
「相手は相当しつこい…絶対に何かある…」
何故追われているのか、それは彼女自身が数週間前、ビルの屋上で起きた一連の出来事を目撃していたからであった。
事件を調査し始めて少し経った頃から、自分が何者かに追われているのではないかと感じ始めていた。
そして今日、遂に相手が実力行使に出てきたという訳である。
リクからの電話の際も、この路地裏に隠れている時であった。
(取りあえず…この街から早く出ないと…)


「あー、この! アンノウン自重しろ!」
数日後、リクの部屋。
巨峰サワーの入った中ジョッキを床に、リクはゲームに勤しんでいた。
「アンノウンでHP128万だぁ!? しかも相手堅すぎだろ!」
そりゃ萎える。
ちなみに、リクがプレイしていたのは某生まれた意味を知るRPGである。
痺れを切らし、電源を切った。短気な奴だ。
ふと、フィアから聞いた話を思い出し、
「……」
リクはゴーグルを首に掛け、棚の上に置かれている剣を取った。
直後、ノックをする音が聞こえ、
「リクさん、夕食の準備が…」
部屋に入ってきたセリアは声を掛けるが、
「悪い。ちょっと出て来る」
「どうかされたんですか?」
「いやな、ちょっと引っ掛かる事があんだよ」
「引っ掛かる事…ですか?」
「そ。だからちょっとリコのトコに行ってみる」
「…? フィアさんではなくて、リコさんの所…ですか?」
セリアは怪訝そうな顔をした。
「あの様子じゃ、フィアの方は大して情報を持ってなさそうだからな。それに……」
「それに……何ですか?」
「…いや、何でもない。とにかく、行ってくる」
「分かりました。気をつけて下さいね。…あ、お夕食はどうしますか?」
「うーん……そんなに時間掛からないと思うからオレの分残しといてくれるか? 下手すると他のヤツらに取られそうな気もするけど」
「大丈夫ですよ。そんな事、私がさせませんから」
セリアは笑顔で答えた。
「悪いな」
軽く右手を挙げ、リクは部屋を出た。
(あの電話の時…話し方からして随分切迫していた……嫌な予感しまくりじゃねーか……)
家の外に出、空を見上げる。
(……死ぬんじゃねーぞ)


「何とか…戻ってこられた……」
各地を回っているせいか、なかなか戻ってくる機会のない自宅。
この辺り一帯は、田舎の田舎、かなりの辺境に位置している為、土地勘の無い者が無闇に立ち入ると遭難するとも言われている場所であった。
「しばらくは…外には出られないかな……」
呟きつつ、自宅の鍵を探す。
その最中、全身に寒気が走った。だが、この日は雨の予報が出ているものの比較的暖かいはずである。
(なに…? 今の感じ……)
得体の知れない恐怖を覚えた時。
後ろから、何かがぶつかる感覚。
「え……?」
この気配。自分を追っていた者と同じ。
すぐ後ろで、囁くような声が聞こえた。

「ジャーナリストさん、みーつけた……」

追っ手の持っていたナイフは、背に突き刺さっていた。



「ったく…こんな時に限って雨かよ…天気予報見とけばよかった」
リコの自宅が位置する区域にやってきていたリクは、一旦歩みを止めた。
「地図の通りなら、もうそろそろ着くハズだな…ったく、雨降ってるからリザードン使えねーしなぁ…」
以前リコからこの区域の地図をもらった事があったが、それでも分かりにくい。
「こんな辺境地域に自宅持つなんて、アイツも相当な変じ……」
そこまで呟いてから、リクは遠目に何かを見つけた。
じっと目を凝らしてみる。
「!?」
その正体に気が付いたリクは、地図をしまうと足元を気にしつつ走り出す。
彼が見つけたのは、背を刺されて倒れているリコの姿だった。
「オイ、リコ! どうした! 一体誰に…」
リクはここで思い出した。あの時の電話での状況を。
(まさか…あの時、コイツは…リコは追われていた……?)
思考を巡らせていたが、
「そうだ…医者呼ばねーと!」
持ってきていた自身の携帯電話を探そうとした時、後ろで雨に濡れた地面を踏む音が聞こえた。
リクが後ろを振り向く。
「お前…ユキハ……?」
立っていたのは、手紙以来全く連絡のつかなかったユキハであった。
「久しぶりですね…リクくん」
「いや、それはそうだけど…何でお前、こんな所に…」
リクの問いに、ユキハは淡々とした口調で答える。
「あなたの後ろに倒れている方に…ご用があったので」
「リコに…?」
リクが返す。
「ただ……ここで私と出会ってしまった事は、リクくんにとっては運の尽き、でしたね…」

ユキハが答えたのと、リクの体にナイフが突き刺さったのは、ほぼ同時だった。



「う……」
目を覚ますと、真っ先に見えたのは真っ白の天井だった。
「ここは……」
リクが呟くと、
「ようやくお目覚め?」
声が聞こえた方向に顔をゆっくりと向けると、椅子に座るフィアの姿を認めた。
「丸二日眠ってたわよ」
「確かオレは……」
突如、何かに気付いたかのように体を起こす。
「そうだ! リコは……つっ…!」
「いきなり体起こすと傷口開くわよ。それに」
フィアは別の方向に目をやる。
その方向には別のベッドがあり、リコが眠っている。
「安心しなさい、命に別状は無いから。ただ、まだ目を覚ましてないけど」
「…そっか」
リクは再びベッドに横になる。
「それじゃ…何があったのか聞かせてもらおうかしら」
「実は…」

リクの話を聞き終えたフィアは何事か考えていたが、
「ユキハがそんな事をするなんて…信じがたいけど…」
「けど、事実だ。オレがあの場に行った時、既にリコが倒れてて、オレもその場で刺されたからな」
「……」
フィアは何か考えていたが、
「彼女に、何か変わった事は?」
「変わった事…そういや、確かアイツ普段は結構落ち着いた話し方するけど、今日は落ち着いてたと言うより、淡々としてた感じだった」
「それだけだと、何かあったかは特定出来ないわ。他には?」
「…そういや、一瞬見ただけだけど、アイツの目…生気がなかった」
「それね」
「何か関係してるってのか?」
リクの問いに、
「確証は無いけれど、私はそう見るわ」
「…って事は、早いトコ元に戻す必要が出て来る訳か」
リクはベッドから起き上がろうとする。
「やめておきなさい。その状態で行っても返り討ちにされるだけよ」
「けど!」
「それ以前に、あなた達2人とも、数日は絶対安静と言われてるのよ」
「…はぁ?」
「それどころか、発見が遅かったら、2人とも死んでたのよ」
「……マジで?」
「胸騒ぎがしたんでしょうね。セリアが心配して私に連絡を入れてきたのよ。それで出向いたら2人とも刺されて倒れてる。冗談じゃないわ」
「いや、けどな…」
引き下がる気が全然ないリクだったが、
「……」
今にも涙が溢れ出そうなフィアの表情を見ると、反論する気が失せてしまった。
「ちっ……」
「…分かればいいの。…今は休みなさい」


その夜。
「……よし」
ゆっくりと病院の窓を開ける。
(…わりーな)
心の中で謝ると、夜の空へ飛び立った。


「…この街か」
リクが降り立った街は、かなりの都会とも言える場所。
深夜だからか、人通りは殆どない。
「この街で事件が頻発してた…となると…」
「あの人はここに戻ってくる、と踏んだ訳ですか」
突然背後から聞こえた声に振り向くと、
「1人で解決しようと言うんですか? 当事者の私を差し置いて」
そこには、リクが病院から抜け出す時には確かにまだ眠っていたはずのリコが立っていた。
「ア、アンタ、何でここに!? 絶対安静って言われてたはずだぞ!?」
「その言葉、そっくりそのままあなたにお返ししますよ。…何してるんですか、こんな所で」
「…アイツは、顔なじみだし過去に色々あったからな。ほっとけなかっただけだ」
「なるほど。…お知らせしておくと、私は事件の真相を突き止めたかったから来ただけです」
「それだったら後でも調べられるだろーがよ。けど、こっちの場合は早く止めないとまた被害出んだよ」
単独行動の方がやりやすいと考えているのか、リクは何とか追い返そうとする。しかし、
「だったら私も同じ理由ですよ。早い所真相を突き止めないと、逃げられますからね。それに…」
リコはリクの前まで歩み寄ると、軽くリクのお腹を押した。
「つっ…!」
「安静と言われたのに出てきた。つまり傷は完治していないという事ですよね?」
「……」
「…1人では、限界があるんじゃないですか?」
図星を突かれた。正直な所、手負いの身では単身飛び込んでも勝てる可能性は低い。
リコは「まぁ…」と前置きしてから、
「それは、私にも同じ事が言える訳ですが」
確かに、よく見ると脂汗が少し浮かんでいる。
「…なるほどな。組もうってか」
「そう受け取ってもらって結構です」
「……さっさと片付けるぞ。長引くとこっちが不利だからな」
「…はい」


「…ところで」
「あ?」
「あの人は…誰なんです?」
通りを歩きながらリコが聞くと、リクは一瞬怪訝そうな顔をした。
しかしすぐに「ああ」と納得し、
「そういや、誰なのかはアンタはまだ知らねーんだったか。…じゃ、今のうちに教えておくか」
話を頭の中で整理しているのか、リクはしばらく黙り、
「名前はユキハ。率直に言うと、オレとフィアの顔なじみ」
「はぁ」
「最初に会ったのは、オレ達が15の時。…その当時は、彼女ちょっと訳ありだった」
「…どういう事です?」
「恋人亡くして、心を病んじまったんだよ」
「心を…?」
「そ。でもって、オレとフィアもそのケアにちょっとばかし協力してた訳」
「でも、どうしてあなたとフィアさんがケアの手伝いを?」
「知らね。何時の間にかそんな事になってた」
「…それで、その後は?」
顔を前に向けたまま、リクは続ける。
「最終的には、だいぶ治った。で、それから引っ越してった。その行き先がこの街」
「それから、ずっとこの街に?」
「そ。しばらく前に手紙がきて、オレらが住んでる街にまた戻ってくると書いてきた矢先に…」
「今回の騒動、ですか」
「考えてみりゃ、アイツは心に結構影を持ってたからな。それを媒介にされて操られる可能性なんて大ありだ」
「なるほど」
「…で、そっちで何か分かってる事は?」
「あ、ええ…」
今度はリクの方から質問が飛ぶ。
「私が把握している事は、その…ユキハさんによって、1人の女性が殺されている事。それだけです」
「…それだけか?」
「ええ…後は逃げるのに精一杯で、調査の余裕がなかったので…」
「…アイツは温厚な性格だし、人を殺すような事はしねーと思いたいけど…」
「そうですね。素の彼女なら、そのような事はしないと思いますよ」
「根拠は?」
リクが聞くと、
「殺された女性から、正体不明の『何か』が出現したんです。それは、ユキハさんに乗り移っていました」
「……操られてる線が濃厚だな」
「ですが、性格等は本人の物らしいんですよ」
「そういう例はいくらでもあんぞ。前にあった一連のダークライの事件の時だってそうだし」
「…まさか、あなたは今回もダークライが関与しているとお考えで?」
リコが聞くと、
「それはねーな」
あっさりと返した。
「もしそうだったら、出てきた途端強い力を感じる。今回のケースは…まぁ、相手自体はそこまで深刻じゃねーだろ。…何人か人が死んでるけどな」
「少なくとも3人は殺されたらしいですからね。状況が状況とはいえ、無罪放免とはいかないと思いますよ」
「それ以前に、本来のアイツの性格なら、潔く罰を受けるだろうさ。責任感強いからな」
「それと、もう1つ…」
「…ああ。戦う事になった場合か」
「勝算は、どのくらいです?」
リクは少し考え、
「ある意味では、操ってる何かよりも、ユキハの方がな…」
「え?」
「アイツ自身の身体能力は結構高いんだよ。けど、それよりも怖いのが…」
一旦言葉を切る。
「集中力」
「集中力、ですか?」
「そ。集中力が半端なく優れてる。それを生かして身に付けたのが居合道」
「となると…」
「それこそ、目を閉じていても、心で相手の気配を感じ取ってくるって事。ちょうど…」
そこまで言った直後、剣を抜いた。
「こんな風になっ!」
次の瞬間、リクは相手の攻撃を受け止めていた。
「なるほど…さすがですね、リクくん…」
「アンタも…その集中力と一撃の瞬発力、全く衰えてねーようだな!」
「え、え?」
リコは1人何が何だか分からない状態だったが、
「援護!」
リクが叫ぶのと同時に我に帰り、距離を取った。
「なるほど、あの現場を見たジャーナリストさんも一緒でしたか。…では、まずは彼女から黙ってもらいましょうか」
ユキハは持っていた刀を素早く鞘に収めると、凄まじいスピードでリクの傍を駆け抜ける。
(まずい、詠唱中は隙だらけだ!)
援護に向かおうと考えるより前にユキハがリコに近づいている為、動けない。
「!?」
驚愕の表情を浮かべたのはユキハの方だった。
「そう簡単に…殺されはしませんよ…!」
ユキハの攻撃は、槍に受け止められている。
「そんな…武器は今まで何も持っていなかったはず…」
「何もねー所から…武器!?」
「感心しませんね。丸腰の人を襲うなんて」
既に槍は手元から消えていた。
「…あーあ。リコを本気にさせちまったよ」
リクは溜息をつくと、
「どんなヤツがユキハの事操ってるか知らねーけど、コイツに最近付いた通り名、教えてやるよ」
『ま…さか……居合の能力が通用しないだと……』
ユキハに乗り移っている『何か』は、リクの言葉にもお構いなし。
これまでは、ユキハの居合の実力を使用して罪を重ねてきた。
その居合が、癖を知っているリクならまだしも、あの時がユキハとの初対面であったリコにまで見破られた。
乗り移っている『何か』は、自信過剰なきらいがあった。その自信が砕かれる事ほど、致命的な事はない。
「コイツの通り名は……」
『や…やめろ……』
声には耳を傾けず、術の詠唱は続く。
「私に傷を付けた代償…高くつきますよ!」
「どんな相手にも、どんな防御を張っていても、構わず貫いて術を食らわす……」
「唸れ、炎よ…舞え、吹雪よ…切り裂け、風よ……決めます!!」
灼熱の炎、凍える吹雪、荒れ狂う風。3つの力が、乗り移っている何か『だけ』を襲う。
それを前にし、リクはぽつりと呟く。
「最終鬼畜魔術ジャーナリスト、ってな……」
「ディバインパウア!!」


「ユキハ! オイ!」
道に倒れているユキハに、リクは呼びかける。
「う……ん……」
開かれた目には、以前のように光が戻っていた。
「リク、くん……? 私は……」
「よかった、正気に戻ったか」
「私……取り返しのつかない事を……」
「今までの記憶、あったのか?」
「はい…だいたいは…」
「…そうか」
「あの…ジャーナリストさん」
「なんです?」
「…すみませんでした」
ユキハが頭を下げる。
「…いい目をしてるんですね」
「え?」
「あなたは、生気のない目なんかより、その目の方がよほどいいじゃないですか」
「え、あの…」
「…恐らく、これからあなたは、自分がした事の罰を受けなくてはいけないでしょう。けれど…」
リコはユキハに向かって笑みを浮かべ、
「待ってますよ」
それだけ言うと、その場に倒れこんだ。



翌朝…
「バカじゃないの?」
病室で、フィアの罵声が飛んだ。
「うるせー」
ベッドの上でリクが悪態をつく。
「夜中に抜け出して解決したはいいけど、2人とも動けなくなったから助けに来いだなんて」
フィアは呆れ顔で顔をリコの方にも向けた。
「あなたもあなたよ。普通、止めない?」
「時には立ち止まれない理由があるんです」
「…反論する気がなくなるのは何故?」
「ま、オレら2人ともこっぴどく病院から説教食らって、傷が悪化してまた入院が伸びたがな」
「自業自得でしょう?」
フィアが即座に返し、リクは「うるせー」と返す。
「…で、ユキハの方は?」
「あの後警察に連行されてったよ。…まぁ、事情が事情だし、そこまで厳しくは裁かれないだろうけど、当分は…な」
「…そう。なら、待つしかない、って事ね」
「そういう事。それより…」
リクはリコの方に顔を向け、
「あの通り名がついた時からどこまでひどいかと思ってたが…アンタがあそこまでチートな術士だとは思わなかった」
「そこまでひどくはないと思いますけどね。……何ですか? その目は」
「別に」
下手に何か言ったら術を叩き込まれる危険性を感じたリクはそこからは何も返さなかった。
「それに」
「はい?」
「何もない所から槍を出す。ありゃなんだ」
「ああ、あれですか」
リクの質問に、リコはただ一言。
「企業秘密です」
「…詮索したら?」
「問答無用でクレイジーコメットです」
「……」
常識人ではあるが、コイツはやりかねない。リクはそう思った。


                   END






誕生日企画、なんとか間に合いました。
今回は「突撃テレフォン&物語実況UP」にさせていただきました。
…あまりサプライズではなかったかな?(苦笑

取りあえず、すまん(ぇ
話の筋を通すため、ジャーナリストには刺されてもらいました(斬
それだけだと不公平なので、あのバカも道連れです(

元々これは、普通の長編として書いてたんだけど、リコさんの誕生日が近づいてたんで、じゃあこれを派生させようと(ぇぇ
なので、今回は過去作品よりジャーナリストの活躍が多めです。
つーか、最後の方は完全にジャーナリストが美味しい所をもらってますね((
ちなみに、最後の「企業秘密です」はパロディです(ぇ



取りあえずこっちサイドでのジャーナリストのキャラはほぼ決まったな(ぇ
「常識人だけど戦闘性能はチートすぎる」という線でいってみましょうか(帰れ



てな訳でリコさん、誕生日おめでとう!
EDIT  |  STORY  | CM(2) | Top↑

Comment

とりあえず涙が溢れ出そうなフィアさんは反則だと思います!(((

ありがとうございます!!
電話サプライズはびっくりしつつ嬉しかったですっ、ある物って携帯だったんですね、確かにほとんどの人が持ってる物で。

最初のリクさんパートにいくまでの文で「今回はヤンデレ(っていうかヤンデル)展開!?」とか思いました((
夜中に一人で見るとなかなか怖かったです(ォ

最終鬼畜魔術ジャーナリストには吹きましたw
どこでそんな通り名を貰っちゃったんだ…。
聞いたとおりのチート性能ごちそうさまです。
ジャーナリストも常識人のふりして結構な変人だと思いm(くれいじーこめっと!

ダメトレさんは活躍をジャーナリストに持ってかれて、刺され損な感も…((

ホントにありがとうございましたー!
来る総帥の誕生日にお返ししますよ!
出来ることといえば絵しかないので、描かせて頂きたいですが、何かリクエストとか無いでしょうか。
ぶっちゃけネタがn(帰れ
ハチリコ | 2010年05月18日(火) 21:56 | URL | コメント編集

>リコさん
あれで意外と気配りのある人ですからね(ぇ
負傷したのがあのバカだったとはいえ、人が傷つくのを見るのは辛い人ですし。
ただ、負傷したのがあのバカだけだったら多分普通の表情だと思いますよ(ぇ

その通り、ある物は「携帯電話」でした。
ヤンデレ展開…最初はそのつもりだったんだけど、書いてるうちに違う方向に(駄
ただ、今回登場したキャラは心を病んでしまったという経歴があるので…って、無理矢理ですね(帰れ
そんでもって、このキャラにも当然モデルがいるんですが、そのモデルが登場した作品では携帯電話が結構重要なアイテムになってたのをさっき思い出しました(ぇ

最終鬼畜魔術ジャーナリストは、ただ適当に考えてたりしました((
何せ、持ってる道具からしてまず鬼畜だしなぁ(斬
ちなみに、クレイジーコメットはD2のハロルド、ディバインパウアはDのフィリアの術だったりします。
ついでに言うと、当然のようにクレイジーコメットからの連携はハロルドみたいに繋げてきますよ(滅

リクエスト…いや、特には…というか、描いていただく側なのにリクエストをするのはおこがましい気がするが…;;
敢えて言うなら、セリアさん関連で私のツボにクリティカルヒットしそうな絵だったら何でもいいです(ァ


>ダメトレさんは活躍をジャーナリストに持ってかれて、刺され損な感も…((
まぁそうなりますわな(蹴
基本的にコイツには損な役回りを任せる事多いですから((
Riku | 2010年05月18日(火) 22:08 | URL | コメント編集

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