2010.12.26(Sun)

お持ち帰りしたと聞いたけど 

念のため上げます(ぇ
華苗ちゃんがかなり気に入ってる作品らしいですよ、これ。
3日間のお礼の意味も込めて、再掲載してみます。


…しかしこのカテゴリ使うのもしばらくぶりだなぁ((



           取り替えてくれ!


「…今、何て?」
自分の前にいる人物が放った言葉に、グランは呆気に取られた。
「頼む、1日でいい。オレのねえさんとお前の姉さん、取り替えてくれ」
そう手を合わせて懇願するのは、ポケモンレンジャーのカナタ。
「…何故。どうして」
「それは、入れ替わってみれば分かる」
「姉が居る奴らなんて、いくらでも居るだろ。何でボクの姉さんに?」
「評判がいいからだ」
グランは少し考えたが、
「お前の姉さんがどんな人かは知らないけど、それでお前の姉さんは納得してるのか?」
「している。頼む。入れ替えてくれ!」
「…ま、明日1日だけなら」
「ありがたい。礼と言ってはなんだが、オレがバレンタインにもらって、余り過ぎたチョコレートを半分やろう」
「…いらない」

その夜、グランの部屋…
「ねぇ、お兄ちゃん。本当にいいの?」
グランの妹のシルフィが聞いた。彼女は、Tシャツにショートパンツという服装で椅子に座っている。
風呂から上がったばかりなのか、髪がまだ少し濡れていた。
「仕方ないだろう。あそこまで頼まれたら、そう答えるしかないと思ったんだから」
ベッドに寝転がったままグランは言った。彼の服装はTシャツとジャージ。寝る時はこの格好なのだ。
あの時のカナタは、要求が聞き入れなかったら泣いて頼むような気がグランにはしたのだ。
「でも、さぁ…1日だけって言ったって、お姉ちゃんが入れ替わるっていうのは…」
「ま、そりゃ戸惑うわな」
「ところで、その、対象になる人っていうのは、どんな人?」
シルフィの質問に、グランは「えーと、そうだな…」と少し考えて、
「カナタから聞いた情報によると、だ。名前はサユリさん。美人だけど一筋縄ではいかないらしい」
「一筋縄ではいかないのは、お姉ちゃんも同じじゃないの?」
「さぁな。人によって感じ方は違うだろうし、全ては明日、サユリさんに会った時にはっきりするさ」

次の日…
「いいか、姉さん。普段ボク達に接する時と同じ様にしてくれよ」
「普段、ねぇ。全然会ってないから、普段も何も無いと思うけど?」
「まぁそりゃそうだけどな」
そう言って、グランは時計を見た。
「そろそろ、かな」
「…待たせた」
「来たな。…その人が、サユリさんか?」
「そう。外見は素晴らしいが、中身はおn…」
「…それ以上言ったら激辛チョコの刑」
「うっ!」
カナタはすぐに黙った。
「…いや、違った。中身も素晴らしい、オレの自慢のお姉さまですハイ」
「よろしい」
サユリは満面の笑みを浮かべた。
グランとシルフィは、思わず顔を見合わせた。
(…なんかあらゆる意味でヤバそうだな)
(お兄ちゃん…どうしよう…)
(まぁ、何とか切り抜けるしかないだろ)
(…やっぱり?)
「その子達が、今日1日私の弟と妹になるの?」
「ああ。…1日だけとはいえ、今日は素晴らしい日に…」
「それ以上言ったら、激辛チョコに加えて青汁の刑」
「うっ!」
「…いやぁ、1日だけとはいえ、大好きなねえさんと別れるのは寂しいなあ」
「はい。花マル」
またもサユリは満面の笑み。しかし、どう見てもカナタはわざとらしい。
「…じゃ、姉さん。コイツの事宜しく。ボク達の接するように接してくれればいいから」

「ところで、あなた達、名前は?」
サユリに見つめられ、グランもシルフィも緊張した。
「えっと、グラン、です…」
「シ、シルフィ、です…」
「グランに、シルフィね。分かったわ。もう知ってると思うけど、私がサユリ。よろしくね」
「「は、はい…」」
「何緊張してるの。1日だけとはいえ、私はあなた達のお姉さんなんだから、リラックスリラックス」
サユリはそう言うが、リラックスしようと思ってリラックス出来れば苦労はしない。
「ところで、ご両親は?」
「えっ、き、今日は1日居ませんけど…」
「ダメよ。敬語は無し。じゃ、お昼は私が作らないとね」
「「は、はぁ…」」

一方その頃、カナタは…
「さあ、こっちよ」
「は、はい…」
やはりカナタは緊張していた。グランの姉、リナの家は、ナナシマにある。
「ふふ…いいのよ。普段どおりで」
(この人、ねえさんとはえらい違いだな…)
「確かあなたは…カナタ君だったわね」
「呼び捨てでいいです。1日だけとはいえオレの…ねえさんですから」
「それなら、あなたも敬語は無しね。1日だけとはいえども、私の弟なんだし」
「はい。…あ、いや… ああ」

「それじゃ、このサユリさんが腕を振るって、美味しい料理を作ってあげるわ」
「あの、サユリさ…じゃなかった。お姉ちゃん、私も手伝いま…じゃなくて、手伝うよ」
「いいのよ。出来るまで待ってて」
サユリに言われ、シルフィはキッチンから追い出された。
「…なーんか、調子狂うな」
グランが言った。
「うん…多分、カナタさんも同じ様な状態だと思うよ」
「姉さんを入れ替えただけで、こうなるなんてな…今度カナタが頼んできたら、絶対断ってやる」
「カナタも、これで私のありがたみに気付いてくれればいいんだけどね」
「なっ…サユリさ…じゃなくて、姉さん、聞こえてたのか!?」
「ええ。しっかりとね」
サユリの声は、どこか楽しそうだ。
「えっと…姉さんは調子狂うなんて事はないのか?」
「何事も慣れよ」
「…慣れるの早すぎだよ、サユリさん…」
シルフィがぼそりと呟くと、
「ほら。呼び方が違ってるわよ」
…恐るべき地獄耳である。

さて、再びカナタの様子を見てみよう。
「お昼、出来たわよ」
「あ、ああ…」
「スパゲティ作ったんだけど、口に合うかしら」
皿を置きながらリナが言った。
「…いただきます」
そう言って、一口。
「美味い…」
「よかった…それを聞いて安心したわ」
「…正直な話、サユリねえさんのより美味い」
「え?」
「…サユリねえさんの料理は…独創的なんだ」

で、その独創的料理を今まさに食べようとしているのがグランとシルフィ。
「さあ、食べてみて」
「あ、ああ」
「い、いただきます…」
2人同時に食事を口に入れる。その直後。
「わあああっ!」
「きゃああっ!」
「あら。どうしたの?」
悲鳴をあげ、一気にコップの水を飲み干すグランとシルフィを、サユリは楽しそうに見守っている。
「ちょっ…ちょっと姉さん! この中に一体何入れたぁ!」
「唐辛子。タバスコ。マスタード。ラー油。豆板醤」
「お、お姉…ちゃん。コレ…辛すぎ…」
「あら、口に合わなかった? よくカナタに作ってあげてるんだけど、いつも『美味しい』って全部食べてくれるのよ」
「…そりゃ、全部食べないといけないだろうな」
「うん…」
「もちろん、あなた達も全部食べてくれるわよね?」
「「えっ!?」」
「万が一残したら…ふふ、どうなるのかしらね?」
「「全部食べさせていただきます」」


「ああ、今日は幸せな日だった…」
そう振り返るのはカナタ。
「…ボク達兄妹にとっては、最悪の日だったぞ」
「頼む。あと1週間くらい、お前のねえさん貸してくれ。こっちも1週間、いや、もっとサユリねえさん貸すから」
「あら、カナタ。それはどういう意味かしら?」
「うっ」
「私が嫌いだって言うなら、仕方がな…」
「オレのねえさんはサユリねえさんだけです」
「よろしい」
「…だが、あの兄妹がああ言うとは…一体あの2人に何をしたんだ、ねえさん」
「さあ。何かしらね。ふふっ…」
「…今度、誰に頼まれても、絶対に姉さんは貸さないぞ…」
「もうあんな目に遭うのはこりごりよ…」
「でも、いい経験にはなったんじゃない?」
いつも通りの柔らかな笑顔でリナが言った。
「…ああ。姉さんのありがたみが痛いほどよーく分かった」
「…私も」
「それじゃ、私達はこれで。…リナさん、カナタがご迷惑をかけました」
「いいえ。こちらこそ、弟と妹がご迷惑を…」
「いい弟さんと妹さん、ですね」
「サユリさんも。カナタ君は、いい弟ですよ」
「…何か、ねえさん同士が意気投合してるな」
「…後で、ボク達の苦労を姉さんに聞かせないと」
「オレも、後でねえさんに今日の事を伝えないとな。もしかしたらねえさんも心を入れ替えてくれるかも知れな…」
「カナタ。帰るわよ!」
「…期待は出来そうもないな」
カナタはぼそりと呟いた。

                END
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