2011.07.17(Sun)

実はそれよりも前に 

前々から書いていたお話が、ようやく完成へと漕ぎつけました。
この作品、実はリコさんの誕生日の際に書いた祝文よりも前に書き始めてました。
なかなか書く余裕が出来ずに止まってたんだけど、せっかくだからこの三連休のうちに書き上げてしまおうと(


で、この話はリコさんへの祝文と華苗ちゃんへの祝文にあった、ちょっとした伏線についての話。
Mセリア(ァ)に科せられた、(多分)重い宿命(?)についてです。
時系列的には、その2つの話よりは後です。きっと。


長めなので、そこら辺は注意ね。



              背負わされた宿命



「はぁ? 何でまた」
用件を聞いたリクが返す。
「いえ、私も事情はよく分からないんですが…とにかく、リクさんにお話があるので月の国へ来てほしいそうで…」
「どうにも見えねーな。セリアに話ってなら分かるけど、オレに…?」
「ええ…それに、リクさんだけで来るようにとも…」
「ますます分かんねー」
リクは腕を組み、天井を見上げた。
セリアを呼びつけるのであれば話は分かるが、なぜ自分を呼びつけるのか皆目見当がつかない。
「オレを呼びつける理由に、何か心当たりは?」
「特には…何も……」
リクの問いに、セリアは首を振って答えた。
(…ま、言ってみりゃ分かるか。確か、例の扉から行けるんだったか…)
出発の準備に取り掛かろうとするが、
(セリアじゃなくて、オレを呼びつけた…何か妙な感じっつーか、嫌な感じがするな…)
「ですが…リクさんを直接呼んできた所を見ると…何か、リクさんに関係する重要な話という可能性もありますね…」
「ま、行ってみりゃ分かるだろ。…んじゃ、ちょっと行ってくる」
リクが玄関に向かおうと背を向ける。
同時に、軽く何かに引っ張られるような感じがした。
「……」
セリアが、リクの上着の裾を掴んでいた。
「…?」
どうかしたのかと問おうとしたが、心配そうとも悲しそうともとれるセリアの表情に、何も聞く事が出来なかった。
「…なんだよ」
かろうじて、そう言うのが精一杯だった。
「いえ……その……」
「ひょっとして、あの時の事があるから不安に思ってんのか?」
「あの方は死にましたが…またいつ、あなたを狙ってくる者が出ないとも限りませんし…」
「そう何度も誰かに狙われたらこっちもたまったもんじゃねーけどな」
「だから…約束して下さい。…絶対に、ここに戻ってくると」
「言われなくたってそうするっつーの。オレの家なんだし」




「リアルに月の国来るの、あの時以来か…」
ダークライとの決戦以来久々に月の国へやってきたリクは、辺りを見回しながら呟く。
「来たか」
威厳のある声が聞こえる。リクは声の主を見た。
「…アンタか」
リクを出迎えたのは、月の国でも屈指の魔術師であるヴァレスであった。
「確か、あの鎌野郎の時以来だったか」
「…その節は失礼した。傷の具合はいかがか?」
「完治。傷跡も残らなかったしな」
「改めて思うと、大した男だ。あれだけの傷を負って生きている上に、完治しているとはな。そこまで丈夫には見えんのだが」
「一言多いっつーの」
「……こちらだ」
リクの指摘には答えず、ヴァレスは先に立って歩き始めた。


ヴァレスの案内で宮殿に入ると、
「この通路を先に進むと、謁見の間となる。女王様は、貴公のみ通すようにとの仰せだ」
「…は?」
「話の間は、我ら側近たちも立ち入らぬように言われているのだ」
「そりゃまた妙なこったな」
「念の為に言っておくが、女王様に対して無礼があってはならぬぞ」
「へいへい…」
リクは適当に返したが、
(側近を近くに置いておかない…そこまでしてオレ以外には聞かれたくねー話なのか…?)


「…ここか」
扉の前に立ったリクは、取っ手に手を伸ばす。
「…っと、いけね」
開けようとして、やめた。
(いきなり開けるってのも不謹慎だしな)
リクは軽く扉を叩く。
「どなたですか?」
中から声が聞こえてきた。
「ヴァレスに言われて来たんだけど」
「まぁ。来てくださったのですね。どうぞ、お入りください」
「…邪魔するぞ」
かなり大きな扉に見えたが案外あっさり開いた事に驚きつつも、謁見の間へ進む。
「ようこそ。ご無沙汰しておりました」
「…で、オレに話って」
「まぁ…意外とせっかちなお方なのですね」
「さっさと用事すませてさっさと帰らねーと、心配性の奴にいらねー世話掛けちまうからな」
「なるほど…ヴェレスの件もありましたし、セリアが心配するのも無理はないでしょう」
女王はリクに背を向け、数歩歩き、
「本題は、わたくしの私室でお話する事にしましょう。…こちらへ」


玉座の裏の螺旋階段を登りきると、純白の扉があるのみで、他には何も見当たらなかった。
「さあ、こちらです」
「…1ついいか」
リクが口を開く。
「ヴァレスから聞いた話だと、謁見の間からも今回の話する為に人払いしたって事らしいけど、それでもさらに自分の部屋まで連れてくる理由が見えねー」
女王は部屋のドアを閉め、鍵を掛け、さらに鍵が掛かっている事をしっかりと確認すると、
「…これで、誰も入ってこないでしょう。さて、本題に入りましょうか」
「鍵を掛ける理由がわかんねーぞ」
「今日、あなたをここにお呼びしたのは……わたくしの心に秘められた、あなたへの想いを…あなたへ伝える為……」
「はぁ!?」
「……ではなく」
「冗談も大概にしてくれねーか…心臓に悪い」
リクが言うと、女王は少しいたずらっぽい笑みを見せ、
「セリアの言う通り、リク様は相当な照れ屋な方のようですね」
(余計な事教えやがって)
「ところで、あなたから見たセリアはどのような感じでしょうか?」
「うーん…」
リクは少し考え、
「一言で言えば、いろんな意味でキャラが濃い。オレと2人だけでいる時とか、何て言うか…年齢制限的な意味で思いっきりアウトな発言多い」
女王は軽く笑みを浮かべ、
「セリアは、人柄などはとても立派なのですが…一方でこのような別名があります。『歩く18禁』と」
「……オレに対しての今のセリアは思いっきりそういうヤツだよ、まさしく」
普段のセリアの様子を思い返しながら、呆れ気味でリクは呟いた。


「で、本当は何の話をする為にオレを呼んだ」
「あなたも…薄々感づいているのではありませんか?」
「……?」
「…セリアの事です」
女王が言うと、
「…やっぱな。アンタの言った通り、どんな話なのかは薄々感づいてはいたけど」
「この話は、お話すべきか否か、迷ったのですが…リク様には知っておいていただきたいと思いましたので…」
一転し、女王は少し暗い表情へと変わる。
「……リク様は、セリアから『戒律』の話を聞いた事はおありですか?」
「戒律…戒律……そういや、初対面の時に、『人間好きになったらダメで、もし好きになっても自動的にその気持ちを消される』っつー話を聞いた事はあるが、あれの事か?」
「はい。今回のお話には、その『戒律』が大きく関わっているのです」
「…どういう事だ」
「まず、リク様にお伺いしますが…最近、セリアに変わった様子はありませんでしたか?」
「変わった様子…? 特にはねーと思うけど…」
「リク様。それは違います」
「は?」
意味が汲み取れないリクは、
「特になにもねーぞ。そりゃ…何て言うか、オレへのアタックが激しい気もするけど」
「……まさに、そこなのです」
「は?」
「この『戒律』は……セリアにしか適用されていません」
「…それ、本人は知ってるのか?」
女王は首を横に振った。
「セリアはこの事実は知りません。そしてこれは、遠い昔、当時のこの国の支配者が、このような『戒律』を制定したと記録には残っております」
リクは腕を組んで考えていたが、
「…けど、『戒律』って言うにはちょっとおかしくねーか? 戒律だったら、寧ろ戒めのようなもんだろ。これ、戒律って言うよりも別の何かな気がするんだけどよ」
「そうですね。これは…『戒律』というよりも、一種の『呪い』と言ってしまった方が良いかも知れません」
「で、その『呪い』が掛けられるようになったのはどんな背景があったんだよ」
リクが口を挟む。
「その当時から人間嫌いだったら、全員にそれ掛けてるだろ。今でもそれがあるんだったら、セリアにだけ掛かってるのはおかしいと思うんだがな」
「なるほど…セリアの報告通り、鋭い一面を見せる事もあるのですね」
(…アイツはオレの事をどの範囲まで報告してやがんだ…?)
不安半分、呆れ半分でリクはため息をついた。
「これは、遠い昔…この国の者が人間界の者と恋に落ちたという事例があったのですが、周囲からの反対に遭い、それを苦にして共に命を絶ったという事件が関係しています」
「…で?」
「この事件を受け、当時の支配者は、この国の者が、外部の者…人間と交際関係となる事を固く禁じ、この国の者全員に『呪い』を掛ける方針を打ち出したのです。ですが…」
「…?」
「この『呪い』は、術者へと掛かる負担が相当大きい物であるが故、国の者全員に掛けるのは到底無理であるという結論に達しました」
「で、今現在のケースでみると、なんでセリアがそれに掛けられてんだよ。まさか適当に選んだって事はないだろうけど」
女王はゆっくりと頷き、
「…この国では、数百年周期で類稀な才覚を持つ者が1名現れます。この『呪い』が考案された当初、この国の者達は、その才覚が外部に流出する事を恐れていたようですから、対象者を、そのような才覚を持つ物と決めたのでしょう」
「まぁ、そういう才能持ってる奴は、そうそう外には出したくなんかはねーよな」
「今回の場合、それがセリアであった為、この呪いを掛けられているのです」
「…ちょっと待て。でもやっぱおかしいだろ」
リクは少し語気を強め、
「そういう『呪い』があるんなら、術者だっているんだろ? アンタも女王なら、命令出して止めさせる事だって…」
「…この『呪い』は、過去は術者が直接掛けていましたが、現在はひとりでに掛かるようになっています。…この国に存在する、たった1人の、凄まじい才覚を持つ者を、察知して」
「……」
「そして、わたくしが最初にリク様にお尋ねした『セリアに何か変わった様子はないか』という事ですが…」
「だから、別段変わった様子なんて…」
「いいえ。…あの『呪い』は、人間に対して抱いた好意を、抱いた瞬間に抹消してしまうという事はさきほどお話しした通りです」
「それが?」
「…あの『呪い』が働いているのであれば、セリアはあなたにアタックを仕掛けてくるという事はあり得ません」
「…は?」
「前に、わたくしの元に、セリアが人間界での様子を報告に来てくれた事がありました。そして、あなたの話になると、とても嬉しそうに、楽しそうに話してくれるのです。…これも、『呪い』が働いているのであれば、あなたについての報告はかなり淡々としているでしょう。そして、決定的なのが…」
女王はしっかりとリクを見据え、
「セリアが、あなたと口づけを交わした事」
「……アイツ…なんでそんな事まで……」
あまり触れられたくなかったのか、リクは顔を背ける。
「あなた方の世界での『クリスマス』という行事での事であったというお話を聞いていますが…」
「……なんでそんな事まで報告してやがるんだ」
「あの時のセリアは、恥ずかしそうな、しかしながらとても幸せそうな、嬉しそうな表情でした。聞けば、あなたの方からも……」
「…ストップ。これ以上言うんじゃねー」
「その話は置いておくとしまして、このようなセリアの行動から、『呪い』の効力が弱まっていると考えるのが自然なのです」
「つーか、なんでそれだけで弱まってるって分かるんだよ」
「ですから、『呪い』がセリアの『好意』を抹消するスピードが追いついていないのです。効力が、掛けられた当初のままであれば、好意を抱いた瞬間に抹消されますから」
「って事は」
「はい。…間違いなく、セリアに掛けられた『呪い』は弱まっているはずです。ですが…」
女王は顔を伏せ、
「ですが、この『呪い』からは、逃れられないようなのです」
「……どういう意味だ」
「『好意』を抹消するのは、一種の記憶操作に近い所があります。好意の抹消は、対象者への負担が強いのです」
「負担?」
リクが聞いた。
「はい。…それほど強い想いでない場合は、対象者への負担も重くはないのですが、セリアの場合は、様子や行動を伝え聞いた限りでは、あなたへの想いが相当強い」
「……」
「対象者が抱く想いが強ければ強いほど、『呪い』の方もかなり強力な力で『好意』を抹消しようとします。そうなりますと、対象者に掛かる負担はさらに重くなる事に」
「…まさか」
「はい。…セリアの想いが強ければ強いほど、あの『呪い』が、彼女を苦しめる事になります」
「けど、苦しんでる様子とか全然ねーぞ」
「…セリアは、あなたの前では自分の苦しむ型を見せたくないと思っているのですよ。しかし…」
「…まだ何かあるのかよ」
「このまま、『呪い』の方がより強い力でセリアの『好意』を抹消した場合、セリア自身がその負荷に耐え切れなくなる事が考えられます」
「…そうなると、どうなる」
女王は黙ってしまった。
「どうなるんだって聞いてんだよ。答えろ」
リクに迫られ、覚悟を決めた女王はゆっくりと口を開く。
その口から発せられた言葉は、残酷なものだった。




「……セリアの心そのものが破壊され、彼女は……あなたや仲間達との思い出も、さらには『自分自身』も、何もかもを失う事になります」




女王の答えに、リクは言葉を失った。
「……そんなの、あんまりだろ」
「わたくしは、常々思うのです。『あの子が、もしも人間界の者として生を受けていれば、このような辛い運命を背負わされる事はなかったはずなのに』と…」
「……心が壊れると言ったな」
「はい」
「今すぐ、どうこうって訳じゃねーんだろ」
「わたくしが見る所では。しかし、セリアが時折頭痛を訴えるようになったら、危険信号が灯っているという事は心に留めておいて下さい」
「頭痛……分かった」
「…あるいは、もう既に危険信号が灯っているのかも知れません。頭痛を伴うようになれば、『好意』の抹消の為にセリアには相当の負荷が掛かっている事が考えられます」
「アイツ、結構無理する方だしな…負担が掛かっても、何も言わねーだろうし」
「そして、効力が弱まっている今、抹消が不完全になっている事が考えられます」
「不完全…?」
「はい。『好意』を抹消しても、何らかの形で僅かながら残ってしまう事があるのです」
「…具体的には?」
「そうですね…『思い出さなければならない、大切な事』として残ってしまうのですが、それが『好意』という事は分からなくなるようです」
「思い出さなければならない事、ねぇ…」
「とにかく、このままですと、セリアの心が壊れてしまうのは、時間の問題です」
「何か…何か、回避する方法とかはねーのか!? アイツがどんな気持ち持ってるにしろ、それで最終的に心が壊れるってのは、アイツがあまりにも不憫すぎんだろ!」
「……」
女王は黙ったまま答えない。
「無いなんて言わせねー…言わせねーからな!」
「……ある事は、あります。しかし…」
「答えろ」
「…1つは、セリアの記憶そのものを、あなたと出会う前の状態に『リセット』する事。そして、もう1つは……」
女王が発したのは、またしても残酷な答え。




「あなたが、あなたの手で、セリアに引導を渡す事」




「な……」
またしても言葉を失った。
「するってーと、なにか? アイツがこの理不尽な状況から逃れるには、今までの記憶を…思い出を失うか、セリアがオレの手で殺されるかを選ぶしかねーって事かよ…?」
「端的に言ってしまえば、その通りです」
「ふざけんじゃねーよ……」
怒りが、一気に爆発する。
「アイツが何をしたってんだ!? 何もしてないってのにこんなろくでもない状況に立たされて……アイツは…アイツは何も悪くねーだろーが!!」
「わたくしも、出来る事ならどうにかしてあげたいのですが……」
「言うまでもねー…2つの方法……どっちもお断りだ!」
「そうでしょうね……どちらの選択肢も、あなた方にとっては、辛いものでしょう。ですから、せめて……」



「心が壊れてしまうその時まで、あの子を……セリアを大切にしてあげてください」





無言でリクは家の玄関に入る。
「お帰りなさい」
いつもと変わらない口調でセリアが出迎える。
「……」
「リクさん…?」
「…え、ああ、悪い。戻ったぜ」
「あの…顔色が優れませんが……」
「…オレなら大丈夫だ。問題ねーよ」
こう返してはいるが、女王からの話がリクにとっては衝撃的であったせいもあり、返事を返すのもやっとといった状態だった。
(心が壊れてしまうその時まで、か……今日なのか、明日なのか、ずっとずっと先なのかは分からねーけど……)
何も言わず、抱きしめる。
「え……? あの、リ、リク…さ……///」
いきなり抱きしめられ、訳が分からず少し混乱しているセリアに、
「……何も言わねーでくれ。けど、オレから一言だけ言わせろ」
自分なりの、精一杯の気持ちを込め、リクは言った。







「セリア。……ありがとう」






                 END






・あとがき


以上、新作でした。
重い宿命を背負わされているキャラっていうのは、深みがあって個人的には結構好きなのです。
最後の「ありがとう」までの一連の流れは、あのバカの様々な気持ちが纏まっている一言だと勝手に思ってたり((
顛末を知らないセリアさんは何が何だか分からないまま抱きしめられたので流石に混乱してますけど(ァ

まぁ、見方によっては、この終わり方も伏線なんじゃね? と思われる方もいるかも知れんな(滅
うーん…書く気が起きたら書きます((
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